地区の守り神「地水神さま」などについて
〔その6〕
昭和63年10月号 第8号 中尾佐之吉
田中野田公会堂の入口のところにつぎのような三つの石塔がある。
①地水二神と三十番神
② 南無妙法蓮華経(題目石)
③ 大覚大僧正
嘉永の始めに建立されたことが石塔に刻まれているので、今から140年ほど前にこの土地の住民が祭ったものと思われる。私が子供の頃にはお年寄りの人が毎日お参りしていた。前述の石塔に刻まれている大覚大僧正は今から600年ほど前に備前地方に来られ、日蓮法華宗を布教された方である。岡山市で有名な蓮昌寺もこの方の創建と言われている。田中野田に古くからおられる家はほとんど日蓮宗の信者で、題目石と大覚大僧正を祭られたのはこのためである。
地水二神とは、地神さま、水神さまのことである。農地と水は稲作農業にとって欠くことのできないものであるが、五穀の豊穣を願って私たちの祖先は大地を守る神さま、水を司る神さまをお祭りしているのである。
三十番神は、1ヶ月30日間毎日交替して法華経とその信者を守護する稲荷大明神など、30柱の守護神のことである。この石塔も公会堂と同じく区画整理のために移転しなければならなくなっている。
この石塔は前述のように日蓮宗の信者のためにあるように思われるかもしれない。しかし、昔の人は一般に宇宙やこの地球は神や佛が支配しているものと思って神や佛をおそれ、そのお陰を受けたいと熱心に信仰していたのである。
科学が進歩し無条件に理由も無く神や佛を信じられないかも知れないが、いくら人知が進歩しても不老長寿の薬は作られない。この世に生まれそして老い、必ず死んでいく弱い人間が強く生きていくための力を神さまに貸してもらい、助けてもらおうと思うのは当然ではなかろうか。忘れかけている地水神さまなどを昔の人たちと同じようにお祭りし、この地区の平和と安全をお祈りするようにしたいものである。