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地震とわが御南の郷

- 近県に発生した過去の大地震の記録からの考察 -

〔その24〕

平成7年4月号 第34号 中尾佐之吉

 今年(平成7年)1月17日、阪神・淡路島に大地震が発生し、死者5千人以上、家屋の倒壊焼失は約5万5千戸とか。それに道路・鉄道・港湾の破壊等大変な被害を受けた。この地震の規模は震度6とも7とも言われている。岡山も震度4の地震で夜明け前の眠りを覚まされたが、幸い被害は殆どなかったと言ってよい。
 最近は東北・北海道方面に大きな地震が度々おこっており、また、関東・東海地方ではかねてから大地震発生の可能性ありと報道されていた。しかし、関西では震度5以上の地震が起こるとは予想していなかったらしく、今回の地震には防災体制がいろいろの面で破綻して被害を一層大きくしたと言われる。
 岡山県でも災害対策の見直しが大きく取上げられるようだ。岡山でも阪神のような大きな地震が起こるのであろうか?心配になって来る。そこで、近県で過去に発生した巨大地震の記録を調べてみる。

 上表は岡山でも相当揺れたであろうと思われる大地震をピックアップしたのであるが、NO13の南海地震を除いて、この地方の被害状況はわからない。県史などの資料を見てもあまり触れていないところをみると大した被害は無かったのかもしれない(注1)。それは、いずれも震源が岡山から遠かったことと、昔は人口の密集した大きな都市がなかったことにもよろう。
 しかし、そうは言っても恐れねばならないのは南海トラフ(注2)沿いの巨大地震である。上表でのNO2,3,4,8とNO13の地震である。震源地はいずれも紀伊水道沖である。震度は、最大級のM8以上で、その範囲はあるときは“「五畿七道」に及ぶ”とも書かれている。つまり、地震波が全国(九州→東北)に及んだこともあったと言うのである。

注1 「今村史」の天災地変の項に御津郡誌から転載された部分を含め地震のことが書かれていて、上表の No5,6,8,13のことがみられる。しかし、No13を除いてこの村の被害状況は不明
注2 「南海トラフ」は西南日本の太平洋側に横たわる海底渓谷のことで、フィリッピン海プレ-トがこの南海トラフの下に潜り込み、圧縮破壊が起こって巨大地震が発生するという。

 昭和21年(1946年)の南海地震は、私の体験した一番大きな地震である。この地震は岡山では震度4の中震ということであった。今度の阪神大震災でもこの地方の震度は同じく4と発表されているが、南海地震の時はもっともっと大きく感じられた。屋根瓦は落ち、道路の電線はずたずたに切れた。幸いこの村(当時は市へ合併前)では、死者は無く倒壊家屋も極めて僅かだったようだ。
 こうして過去の発生した大地震を調べてみると、南海トラフ上の巨大地震が過去何回も起こっていることがわかった。そして、今後も起こるであろうことも疑うことはできない。この地方は活断層に因る直下型地震に見舞われることはないだろうと言えるが、ご承知のように沖積層の軟弱地盤ではある。最近は昔に比べ建築の耐震技術が格段に進んでいるので、むやみに心配は要らないと思うが、決して地震を甘くみてはなるまい。

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