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ニューストピックス(2015年12月12日)

中学生の避難所運営ゲーム

12月12日(土)午前9時から、富山中学校多目的ルームにおいて、岡山市(市民協働企画総務課)・富山公民館・富山学区婦人会・富山地区青少年育成協議会の四者共催による「とみやまジュニア防災講座〜HUG(避難所運営ゲーム)」が行われました。

「とみやまジュニア防災講座」とは、大規模災害が国内各所で続発し、近い将来南海トラフ連動地震の発生が取り沙汰されるなか、地域の安全・安心を担う人材、わけてもジュニア世代を養成しようと富山公民館(中山地域担当職員)が提唱した取り組みで、今後中学1,2年生の2年間に防災講座・訓練等を3回受講(参加)した生徒に「とみやまジュニア防災講座認定書」を交付するというものです。

片岡富山公民館長の開会挨拶
片岡富山公民館長の開会挨拶

その初回講座が、今回の「避難所運営ゲーム」です。

「地域応援人づくり講座/中学生諸君!避難所シミュレーションゲームを体験しよう!」などと大書された会場にはテーブルで6つの島が設けられ、参加した受講生たる生徒の1,2年生各3人(男子3人、女子3人)(基準)〜合計39人が6個班に分かれて着席し、各班には岡山市津高・瀬戸・中央・操南・南・北公民館の地域担当職員と富山学区婦人会員が各1名ずつ配置されました。テーブルの上には中学校の大きな平面図が広げられています。

富山公民館の中山地域担当職員の総合司会で、まず、富山公民館の片岡館長が開会の挨拶に立ち、「HUGとはNHKと同じような日本語の頭文字、すなわち避難所のH、運営のU、ゲームのGを並べたもので、優しく抱きしめるという英語のHugの意も含めた造語」だと話し、ジュニア世代の防災意識の覚醒に期待を寄せていました。

富山学区婦人会によるカレー作り 講師は、岡山県防災ボランティアコーディネーターの森田 靖さんで、会場には富山中学校の長尾教頭ほか4名の教員、前出の富山公民館員、加藤婦人会長以下6名の会員、育成協の大会長や広報研修部員などの関係者が詰めかけ、別棟の調理室では昼食のカレー調理要員の婦人会員6名も早朝7時半から煮炊きに精出していました。

森田氏によれば、「中学生を対象にしたこの種の講座は3回目」とのことです。

HUGの進め方を説明する森田講師
HUGの進め方を説明する森田講師

講座は、まずHUGの進め方の説明から始まり、10時30分までの1時間は各班ごとに地域担当職員が次々に繰り出す状況付与のカード(イベント情報=上級・関係機関等の動向情報70枚を含む計200枚)を受けた生徒たちが互いに協議しながら、陸続として避難所にやって来るいろんな苦難や事情を抱えた人々にどう対応し、どのように受け入れるかを次々と決めて行きます・・・とは言っても、60分間に200状況が付与されるということは、実に18秒に1件は処理しなければ、避難所入口は避難民で溢れかえることになるのです。

状況付与カードの例「長男は自閉症。テントを持参したので、その中で暮らしたい。」 状況付与カードの例「郵便局ですが、明後日に臨時郵便ポストを設置します。どこに設置するか決めておいてください。」
状況付与カードの一例
「この人をどの部屋へ」熱心な討議が続く
「この人をどの部屋へ」熱心な討議が続く
やがて、体育館は避難者カードでいっぱいに
やがて、体育館は避難者カードでいっぱいに

1時間近くが経過するころになると、机上の中学校舎の平面図上はカードで埋め尽くされ、いったん大災害が起こったときにはこんなことになる!と、ひしめき合うカードの波が実相を雄弁に物語っているようでした。

休憩の後、各班ごと順番に「着意したこと」などを代表者が発表しましたが、

  • 車椅子の人は段差のない1階の部屋へ

  • 妊婦さんの部屋には、助産婦さんを同室させた

  • 夜泣きがはげしい赤ちゃんは、防音効果のある音楽室へ

  • 届けられたおミルクやおむつは、赤ちゃんのいる部屋の近くへ

  • 外国人は一カ所へ集約し、通訳も同室に

  • 家族やご近所の人は、なるべく同じ部屋へ

  • インフルエンザ患者は個室へ収容した

等々、それぞれに配慮した処遇がうかがわれました。

講評に移り、講師からは、

  • 心臓病発作のある人、額から出血している人、高血圧症だが薬がない人、ぜんそく発作のある人、急に立てなくなったおばあちゃんなどのカードがあったが、「保健室等に収容」とした班は正解ではない。

    重症化すると、あるいは症因を突きとめて適切な措置をしないと、避難所で死者を出すことになりかねない。

    このような避難者は、医療機関に搬送する着意が肝要だ。

  • インフルエンザ患者や下痢患者(ノロウィルスの疑い)のカードもあったが、このような避難民は決して受け入れてはならない。

    避難所内にこの種の疫病が蔓延し、避難所が全滅の憂き目に遭うかもしれない。

  • 次々に出される状況付与カードの中から、このような問題を抱えた避難民を賢明に見出し、峻別することが大切だ。

等、要点をついた解説がありました。

また、「大人では気付かない、中学生ならではの新鮮な着眼での有為な発想に触れて感動した。どうか、これからも自信を持って発言してもらいたい」と激励の言葉もありました。

また、「今日からは何ができるか」「自分たちにできること」を各班ごとに討議〜発表した中では、次のような堅実な意見が聞かれました。

  • 非常用食料、避難場所、連絡方法などを、家族で話し合いたい。

  • 災害についてもっと知りたい。

  • 救急用品、懐中電灯、ラジオなどを常備したい。

  • 地域の方と顔見知りになりたい。

  • 新聞紙や段ボールを集めておきたい。

ちょうど昼食のころとなり、参加者全員がアルファ米の「わかめご飯」1個を受領し、熱湯を注いででき上がりを待つ間に、婦人会員の指導で新聞紙とナイロン袋による応急食器を作りました。

アルファ米の非常食にお湯を注ぐ新聞紙で応急食器づくり

これにでき上がったわかめご飯を盛り付け、婦人会員が早朝から調理していたカレーをかけてみんなで昼食です。

ご飯にカレーをかけてもらう生徒マイ食器で、おいしくいただきました

江口校長の閉会あいさつ
江口校長の閉会あいさつ

最後に、朝から別のボランティア活動に参加していて遅参した江口校長が閉会の挨拶に立ち、「残念なことが一つある。それは、講師の話を聞こうとしない生徒が散見されたことだ。翻って、災害の時に最も悲惨な目に遭う人はどういう障害をもった人だろうか。それは、聴覚障害者だと言われている。なぜなら、目の見えない人や運動機能に障害のある人は、傍から見ても分かるので援助の手を差しのべても貰える。が、耳の聞こえない人は、何が起きたのか、自分はどうすればいいのかが判断できないでいるからだ」と話され、これを聞いた記者は校長の含蓄ある説話の余韻のなかで「(講師の話にもあったが)本当に助けが必要な人は声が上がらない。いま必要なケアを見極め、援助のニーズに応えるために、君たちのその耳を十分に活用しないテはない。平素から人の話をよく聴くことに心掛け、声なき声を発掘することこそ災害対処の要訣だ」という結言を聴いた思いでした。

婦人会長から「受講確認書」を授与
婦人会長から「受講確認書」を授与

参加者は全員“世界に一つしかない”「受講確認者」を受領し、アンケートに答えて、多くの教訓を胸に午後1時過ぎに散会しました。

(文・写真:小野田)

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