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お瀧山 花広場

福泊地内、金光教操山教会の左上方約60メートルの山腹に、古くから呼び親しまれた「お(たき)山がある。 山の斜面に開かれた大略1,100平方メートル(約330坪)の広場だ。

お籠り堂内の阿弥陀如来木像 古老の話によれば、そこには昭和40年代前半ごろまでは“お(こも)り堂”が建っていて、木造平屋・瓦葺きの本堂には十数畳の広間があり、南側には(えん)を配し、西奥には一段高い祭壇があって、ご本尊の薬師如来木像などが祀られていたといい、上道郡史にも「薬師堂・(本尊)薬師如来・(鎮座)富山村大字福泊字笠井山・明治11年4月18日存置願許可」の記述があるが、いまやそのお姿はない。

本堂の東には別棟でお堂守りの住まいがあり、夫婦者などの住み込みの堂守りが朝な夕なに太鼓を叩いてお祈りを捧げたり、戦時中には出征兵士の家族などがお堂に籠って「武運長久」を祈ったのだという。

水とり場 また、このお瀧堂は村の集会、花見、(しろ)みて(田植えが終わったあとの打ち上げ慰労会)などの地域の交流の場としても利用され、往時を懐かしむ高齢者は多い。

お堂守りが生活するための所帯水は、山裾(ちょうど住まいの裏)に滴り落ちる岩清水を使っていたが、どうやらこれがお瀧さまの名前の由来らしく、今も屋根掛けされた水とり場が残っている。

鯉のぼりがはためくお瀧山花広場からの眺望 時は移ろい、累代にわたった堂守りも去り、お堂は朽ち果てて「なんとかしなければ」ということになり、地元住民の経費負担と勤労奉仕により、お堂があったところより一段高い場所にコンクリートブロック造りのお堂をつくって、ご本尊と併祀されていた(と思われる)阿弥陀如来像や稲荷社を安置した。 時に、昭和45年ごろのことである。

近年は福泊町内会の努力により整備が進められ、ゆったりとくつろげるベンチ、20余本に及ぶ桜の木、藤棚、四季折々の草花などが訪れる人をやさしく迎えてくれる。

平成19年からは新緑のころには鯉のぼりが揚げられ、通称「大岩」の上からの眺望は一望千里だ。

仏様や神様の鎮座まします“聖地”お瀧山。修験場から観光と憩いの広場へと変貌する有様を、静かに見守る苔むした石仏たちの思いや如何ばかりであろうか。

居並ぶ石仏と新堂

【参考】

広場一帯はその大半が国有地(一部、隣接地は福泊住民の私有地)であり、伝承による天台寺の領有は(登記簿をみるかぎりでは)認められない。

また、岡山市の公園・緑地・ちびっこ広場にもリストアップされておらず、行政の関知しない、文字通り福泊町内会手作り・自主管理の“お瀧山 花広場”である。

(文・写真:小野田)

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