2006年(平成18年)6月28日
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XIV 皮膚の老化対策

 赤ちゃんの肌は、「絹のハンカチ」ですが、お年寄りの日にあたらない肌は「ティッシュ・ペーパー」、お年寄りの日にあたる手や顔は「ボール紙」となってきます。
 皮膚の老化は、自然な老化に、紫外線による影響が加わったものです。
 最近の研究で、皮膚の老化も遅らせることができると判ってきました。
 今回は、皮膚の老化対策につき考えてみました。
                 
  
1) 皮膚の構造


 皮膚は、表皮、真皮、皮下組織の3層からなります。
 表皮は、表面より角層、角化細胞、基底細胞からなっており、バリア機能(外から病原菌やウイルスがはいらない、身体の内部の水分が蒸発しない、など)を担っています。
 また、基底細胞内には、メラニン色素細胞があり、皮膚の色をきめたり、シミ、ソバカスなどの色素沈着症の原因となります。
 角層は、足の踵では100層以上ありますが、顔では10層以下で、少しの刺激ですぐに傷つきます。「面の皮」の厚い方もいますが、実際には、身体のなかで顔は、角層が最も薄い部です(正確には、最も薄いのは、外陰部で4~5層です)。
 真皮は、コラーゲン線維、弾力線維、ヒアルロン酸、神経、血管などからなっています。表皮を支え、表皮に栄養を与え、痛み、熱さなどの外部刺激を感じる部です。
 皮下組織には、脂肪細胞が多く、皮膚と筋肉・骨との間にはさまって、クッション役をはたします。

2) 皮膚の老化

 皮膚は、20歳頃までは、みんなきれいです。20歳をすぎると、シミがでてきます。アンデスなどの高地で生活している少女は、紫外線の影響で、20歳くらいでみんなシワシワになっています。
 また、外来にこられる患者さんのなかで、胸部はシミひとつなく30歳くらいの皮膚にみえる女性がおられますが、顔は60歳半ばで、年相応です。
 これらはすべて、光老化(=紫外線の慢性障害)によるものです。紫外線のあたる顔、頚、手などは、どんどん老化がすすみます。逆に、光のあたらない胸部、腹部、臀部などは、自然な老化を示します。

光老化には、
シミ(老人性色素班)
しわ、たるみ
毛孔開大
日光角化症
 などがあります。荒れてごつごつに肥厚した皮膚に、シミ、しわ、黒っぽい毛穴、イボなどのいろいろなできものが多彩に存在しており、皮膚も黄色っぽくなっています。皮膚の黄色は、真皮内に変性した弾力線維がふえているためです。
自然の老化には、
皮膚の萎縮
皮膚の乾燥
真皮内の毛細血管の拡張、脆弱化
老人性血管腫
 などがあります。皮膚はうすく、カサカサし、弾力性がなく、裂けやすくなっています。皮膚の下の血管が透けてみえます。また、こすったり、ぶつけたりすると、すぐに出血します。

3) 皮膚の老化対策

 皮膚の老化予防のためには、ふだんからのスキンケアと、栄養補給が大切です。光老化は、紫外線を避けることにより、ほぼ予防できます。自然老化も、以下の項目に注意することにより、ある程度予防できます。
紫外線には、できるだけあたらない:最も大切です。対策法は、前回(2006年5月27日版)述べましたので、参照して下さい。
皮膚を乾燥させない:角層に水分を補給しておくことが、「みずみずしい肌」につながります。いくら水分を飲んでも、角層には届きません。毎日、2~3回、保湿クリームを塗っておくのが、ベストです。入浴後も、15分以内には塗って下さい。冬場は、とくに空気も乾燥するので、しっかり塗っておくと、皮膚病の予防につながります。
皮膚を刺激しない、こすらない:お風呂では、ゴシゴシとこすりすぎないことです。ナイロンタオルは、使わないように。手のひらで洗うのが、肌には一番やさしいのです。石鹸の使用も、頭、顔、頚、腋下、股、足など、皮脂の多い部分や汚れやすい部分だけにして下さい。
 また、痒いときに爪でかくと、皮膚を傷つけます。痒いときには、氷枕で冷やすと、痒みが楽になります。乾布摩擦も、皮膚を傷つけるだけで有害です。
けがをしない、皮膚炎にならない:けがをした部分に、皮膚がんができることがあります。
血流を改善する、血管を丈夫にする:マッサージやお風呂が、効果的です。
適度の汗をかく:運動して汗をかくことも、皮膚の保湿に役立ちます。
ストレス・睡眠不足に注意:ストレスや睡眠不足は、肌あれの原因になります。
栄養補給:
(1) 動物性蛋白;表皮の角層、毛、爪はケラチン蛋白からなっています。不足すると、毛や爪ももろくなります。ケラチン蛋白には硫黄が含まれていますが、硫黄を含む蛋白は、動物性蛋白のみです。時には、肉も食べて下さい。
(2) ビタミンA; 皮膚の乾燥予防に大切です。
(3) ビタミンB2;美容のビタミンといわれており、皮膚の新陳代謝を活発にします。
(4) ビタミンC;美白のビタミンとして有名で、色素沈着をうすくします。また、真皮のコラーゲンをつくったり、血管の壁を丈夫にするのにも役立っています。
(5) ビタミンE;皮膚の血流を改善します。
(6) 抗酸化物質;紫外線などによる活性酸素の害を減らすのに有効です。食生活のポイント2(2005年7月28日版)を参照して下さい。

4) 言志四録より

     少(わか)くして学べば、即ち壮にして為(な)すこと有り
     壮にして学べば、即ち老いて衰(おとろ)えず
     老いて学べば、即ち死して朽(く)ちず

 これは、江戸時代の儒学者、佐藤一斎の言葉です。老いを認めたうえで、学びつづけることの大切さを説いたものです。佐藤一斎は、当時としては異例の88歳まで長生きしました。
 皮膚の老化予防も大事ですが、人は、見かけの若さよりも、やはり中身なのかなと思います。