2005年(平成17年)7月28日
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Ⅲ 食生活のポイント-その2 

  日本人の食生活の特徴は、1)生食 と 2)内臓食・血食の欠落の2点です。    
 3世紀後半の中国の魏志倭人伝には、「倭地温暖冬夏食生菜」という記載があります。日本人は、昔から何でも生で食べる習慣がありました。馬刺や生卵などは外国人には気持ち悪いそうですが、生食は、各種栄養素をそのまま摂り入れるのに有効でした。
 しかし、内臓や血を摂らないのは、世界的にみたら少数派です。ドイツには、「血のソーセージ」というのがあって、豚の心臓と腎臓に血を加えたものです。また、アフリカのマサイ族は、常用する牛乳(ヨーグルト)に、時々牛の血をまぜて飲んでいます。           
 内臓や血は蛋白やミネラルの宝庫ですが、日本では、これらを摂らないために、ビタミンAとカルシウムが不足してきます。せめて小魚くらいは丸ごと食べるべきでしょう。

1) 食事バランスガイド
 2005年6月、厚生労働省と農林水産省は「何を」「どれだけ」食べたらよいかを具体的に示した食事バランスガイドを発表しました。一日に必要な栄養を万遍なく摂るための指標です。ただし、これは成人向け(2200Cal/日)のため、女性や高齢者は少なめでよいと思います。
大体の目安は
主食:炭水化物40gを1つ分と設定し、1日に5~7つ分摂取して下さい。例えば、おにぎり1コ、食パン1枚、ロールパン2コはそれぞれ1つ分です。うどん1杯は2つ分に相当します。
副菜:野菜70gが1つ分で、1日に5~6つ分必要です。野菜サラダや野菜の小鉢が1つ分です。野菜いためは2つ分になります。
主菜:蛋白質6gが1つ分で、1日に3~5つ分必要です。目玉焼き1皿が1つ分、焼き魚は2つ分、ハンバーグや鶏肉のから揚げは3つ分に相当します。
牛乳・乳製品:カルシウム100mgが1つ分で、1日に2つ分必要です。牛乳コップ半分、ヨーグルト1パックが1つ分です。
果物:果物100gが1つ分で、1日に2つ分必要です。みかん1コ、りんご半分、ぶどう半房、桃1コがそれぞれ1つ分です。
 
 また、米国癌研究財団は、がん予防のための食品ピラミッドを発表しています(1997年)。それによると、にんにく、キャベツ、大豆、しょうが、人参、セロリなどが、がんを防ぐ食品として上位にランクされています。

2) 良質の蛋白質
 
身体の蛋白質のもととなるアミノ酸には24種類ありますが、このうち8種類は人間は合成できません。これらは必須アミノ酸とよばれ、食事から摂りいれる必要があります。この必須アミノ酸をいかにバランスよく含むかによって、蛋白質の良し悪しがきまります。プロテインスコアが高いほど、良質の蛋白です。
 一般的には、魚介類や肉が高スコアですが、いろいろな野菜、穀物、豆を組み合わせると動物性に近い蛋白となります。

紫陽花 プロテインスコア

卵(100)、しじみ(100)、
さんま(96)、いわし(91)、
豚肉(90)、鶏肉(87)、
そば(85)、牛肉(80)、
牛乳(74)、米(73)、
うどん(56)、大豆(56)、
食パン(44)、しいたけ(18)

3) 良質の脂肪
 脂肪の摂取量は総カロリーの20~25%が適正です。        
 身体に良い脂肪は、植物油の一部(オレイン酸系、アルファリノレン酸系)と魚油(EPA,DHA)です。動物油と植物油の一部(リノール酸系)は、できるだけ控えて下さい。
 昔、日本人の子供が世界一賢いのは魚を食べるからだと、イギリスの学者が報告しました。それから魚油(DHA)が注目されてきました。なかには自分の子供にDHAのサプリメントを摂らせている親もいるそうです。 
 ただし、魚油としそ油、あまに油などの植物油は熱に弱く、酸化されやすいため、できるだけ酸素に触れないように保存し、早めに使い切ることが必要です。酸化された脂肪(過酸化脂質)は、活性酸素とならんで有害です。
 加熱調理には、比較的熱に強いオレイン酸系の油が向いています。
 リノール酸系の油は長期に摂ると、炎症反応をひきおこし、動脈硬化の促進、血圧上昇、コレステロール上昇、アレルギー亢進などの作用があるため、できるだけ控えて下さい。
 また、マーガリンは植物油に水素添加して半固形にしたものです。天然には存在しない「トランス型脂肪酸」を多く含み、心臓病の危険因子です。市販のスナック菓子やパンにもこの硬化油が使われています。日本では、表示義務がないため規制されておらず、要注意です。
調理方法
オリーブ油(オレイン酸系)いため物に
なたね油(オレイン酸系)揚げ物に
しそ油、あまに油(アルファリノレン酸系)ドレッシングに
べにばな油、コーン油、ひまわり油(リノール酸系)できるだけ控える

4) 抗酸化物質
 活性酸素を消去する物質には、SOD(スーパーオキサイドジスムターゼ)、グルタチオンペルオキシダーゼ、カタラーゼなどの身体が合成する抗酸化酵素とビタミンC、ビタミンE、ベータカロチン、ポリフェノール、カロチノイド、イオウ化合物など食品から摂り入れるものまで多種あります。抗酸化酵素の合成には良質の蛋白質とセレニウム、亜鉛、マンガン、鉄などのミネラルが必要です。
 植物は一日中つよい日光にさらされるため、多量の抗酸化物質を蓄えています。
 とくに、色の濃い食品や苦い食品に抗酸化物質は多く含まれています。
 40歳を過ぎると、SODなどの酵素の合成力が急速に低下してきますので、これらの食品を積極的にとる必要があります。
色の濃い野菜、果物
赤、緑、黄:ブロッコリー、ニンジン、ホウレンソウ、トマト、レモン、イチゴ等
黒:黒ゴマ、大豆等
赤い魚介類:エビ、カニ、サケ、スジコ等
苦味のある食品:緑茶、赤ワイン、ウコン、ニンニク、タマネギ、ショウガ、ワサビ等

5) 悪い食事
 
悪い食事をまとめてみました。日本人42歳寿命説というのがあります。今の若い人の食事では、子供の頃から成人病となります。将来の日本が心配です。
高カロリー、高脂肪、低繊維食:ファーストフードは要注意です
加工食品:食品添加物が多い、ナトリウムがふえる(例えば、食品100g中のナトリウム含有量は、小麦2mg、食パン520mg、スナックめん3000mg)
ポテトチップス、インスタントラーメン:過酸化脂質、塩分が多い
天ぷら、フライ:カロリーが2倍以上に増える(食べる時は、ころもをはずして食べる)
マーガリン:コレステロールをあげる、善玉コレステロールをさげる
肉・魚の燻製、干物:過酸化脂質がふえる(肉のこげ、煙には発がん物質も含まれています)
砂糖:インスリンの過分泌、血小板凝固能の亢進、白血球機能の低下をきたす