2006年(平成18年)5月27日
-13-

XIII 紫外線をさける

 西暦2300年、地球の環境破壊が進行し、成層圏のオゾン層が消滅しました。そのため、地表には、太陽からの紫外線が、容赦なく降り注いでいます。
 殺人光線ともいわれる紫外線の影響で、地表の動物は姿を消しました。がんや感染症にかかったり、白内障のため失明して、絶滅していきました。わずかに生き残ったのは、夜行性動物と地下にもぐった動物です。
 花粉をはこぶ昆虫もいなくなったため、花をつける被子植物は絶滅し、シダやソテツ類が全盛となっています。まるで、5億年前、植物が海から地上へと上陸を始めた古生代オルドビス紀に戻ったようです。
 わずかに生き残った人類は、シェルターの中でほそぼそと生活しています。
 これが、地球の未来の姿かもしれません。
 現在、南極上空のオゾン・ホールが徐々に拡大し、ときには南米チリの上空にまで達しています。また、最近20年間の年平均紫外線量が、6~14%も増加したと報告されています。紫外線の恐怖が現実になりつつあります。
 毎年、6~7月は1年で最も紫外線がつよくなる季節です。紫外線はできるだけあびない方がいいのです。今回は、紫外線対策につき考えてみました。

  
1) 紫外線とは


 太陽光線のなかには、可視光線より波長の長い赤外線と、波長の短い紫外線が含まれています。紫外線も、波長の長いほうから、紫外線―A波(UV-A),紫外線―B波(UV-B)および紫外線―C波(UV-C)の3種類に分類されています。
 UV-Cは、大気中のオゾン層で吸収されますので、実際に地上にとどくのは、UV-AとUV-Bです。

2) 紫外線のつよさ

 紫外線のつよさは、1年のうちでは、日照時間の最も長い
夏至の頃が、最大となります。8月の最も暑いころよりも、6~7月のほうがつよいのです。
 1日のうちでは、太陽が最も高くあがる
午前10時~午後2時頃が最大となります。
 天気との関係では、晴天時が最大で、うす曇りは8~9割、曇りは6割、雨の日は3割に減少します。
 また、紫外線には、上空から直接降り注ぐ
直射光以外に、大気中の空気分子にぶつかって散乱してくる散乱光と、地表で反射してくる反射光とがあります。
 
散乱光は、地上に達する紫外線の6割と最も多くを占め、たとえ木陰にいても、青空がみえている場所では、降り注いでいます。
 また、
反射光は、地面の状態により異なります。反射率は、新雪80%、砂浜10~25%、水面10~20%、コンクリート・アスファルト10%、草地、土面10%以下などといわれており、スキーや海水浴などでは、たとえ木陰や日傘があったとしても、日焼けします。

3) 紫外線の害

日焼け:主にUV―Bの影響です。UV―Bは、皮膚の表皮まで到達し、皮膚のやけどをおこします。
シミ(老人性色素班):UV―Aは、皮膚の真皮まで到達し、シミの原因となります。60歳以上の方では、ほぼ全員にみられます。皮膚の基底層にある色素細胞内のメラニン顆粒がふえている状態です。
しわ、たるみ:光老化といわれています。紫外線により、真皮内の線維芽細胞がつくるコラーゲンの量が減少し、さらに、コラーゲン分解酵素の働きも活発となって、真皮内のコラーゲン量が全体的に減少してきます。また、弾力性をたもつエラスチンも変性し、かたまりをつくった状態です。
皮膚がん:主にUV―Bが関係し、UV―Aも促進因子となります。紫外線が、表皮基底層にある分裂細胞の遺伝子(DNA)を障害するためです。
 皮膚がんは、黒人や黄色人種に比べ、白人に圧倒的に多く発生します。日本人でも、色白で、日に当たるとすぐに赤くなり、数日後にはまた元にもどるタイプの方が要注意です。
 皮膚がんは、紫外線の生涯暴露量(一生のうちにあびる量)が関係するといわれており、子供の頃からの注意が必要です。
白内障:紫外線が眼からはいると、水晶体が混濁し、白内障となります。屋外で仕事をする人や、高齢者でよくみられます。
 現在、白内障により失明した人は、全世界で1700万人、うち20%が紫外線によるものと考えられています。開発途上国では、失明の第1原因です。
免疫能の低下;紫外線をあびた後は、全身の免疫能が低下することが知られています。海水浴後に口唇ヘルペスや帯状疱疹になったり、かぜや肺炎など、感染症にかかりやすくなります。
疲れ:最近、目から紫外線がはいるだけで、体内に疲労物質がたまり、疲れやすくなるという事もわかってきました。

4) 紫外線対策

紫外線の多い時期や時間は外出しない:外出は、朝か夕方以降にしましょう。。
日光浴は15分まで:以前は、日光浴が薦められていましたが、最近では、日光にはできるだけあたらない方がいいという考えになってきました。日光にあたると、皮膚にビタミンDがふえ、骨が丈夫になるというメリットはありますが、害の方が大きいのです。
 もし日光浴をするなら、1日10~15分までです。
皮膚を露出させない:紫外線対策用の帽子、長袖、手袋、サングラスなどを必ず着用しましょう。
日焼け止めクリームを塗る:日焼け止めクリームには、UV―Bのブロック度をあらわすSPFと、UV―Aのブロック度をあらわすPAがあります。
 最近のクリームには、紫外線吸収剤(紫外線を吸収して、肌に届かないようにする)と紫外線反射剤(紫外線を反射し、肌に届かないようにする)の両者が含まれています。紫外線吸収剤は、まれに光アレルギーをおこす可能性がありますので、アトピーなど肌の弱い方や子供には、「紫外線吸収剤無配合」と表示された製品が無難です。
 また、塗るときには、十分な量を使い、2~3時間おきに塗りなおすことが必要です。
ビタミンDを食事から補う:ビタミンD不足とならないために、食事から摂取する必要があります。ビタミンDの多い食品は、魚の肝油、いわし、にしん、さけ、まぐろ、牛乳、乳製品などです。

5) 美肌とは

 美肌とは、表皮表面の角層の状態がいいものをいいます。これは皮膚の新陳代謝が良好に保たれている証拠で、この時、肌にはつやがあり、光を均一に反射して、美肌となります。
 表皮の細胞は、4週間で新しく入れ替わっています。
 皮膚炎があったり、皮膚をつよくこすったりすると、皮膚の新陳代謝は速くなり、角層は、不全角化(未熟な角質)状態となって、バリア機能が低下します。
 また、年をとると、新陳代謝は遅くなります。角層は厚くなり、くすんできます。細胞間脂質(セラミド)も減り、皮膚が乾燥してきます。
 美肌を保つためには、ふだんからのお肌の手入れ(とくに皮膚を乾燥させないこと、お風呂でゴシゴシ洗い過ぎないこと、入浴後に乳液などをはやく塗っておくこと、など)、食事の注意(たんぱく質―動物性たんぱく質も必要、ビタミンA,B2,C、Eなどを十分にとること)それに紫外線にあたらないことが大切です。

6) 小野小町の歌

 世界三大美人といえば、クレオパトラ、楊貴妃、小野小町ですが、小野小町は、秋田出身で、色白でした。秋田美人は、白人よりも色が白いというデータがあるそうです。

  花の色は 移りにけりな いたづらに
   我が身世にふる ながめせし間に 

 これは、小野小町の有名な歌です。雨にうたれて散っていく桜をみながら、恋人のおとずれもなく、空しく老いていく自分の姿を嘆いたものとされています。
 美人でも、そうでなくても、結局は同じなのです。