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西村 輝の防災コラム
●その1(岡山平野のリスク)●その2(堤防はなぜ決壊する)●その3(地震時の液状化現象)

吉備学区連合町内会 会長 西村 輝
岡山大学 非常勤講師(地盤防災工学)
 皆さんは堤防の内部にどのような土が使われていると思いますか。実は誰も知らないんです。その昔、河川が氾濫する度に地域の人々が土を盛りヨイトマケで締固めて築堤してきた歴史が有ります(図-1に築堤履歴の模式図を示す)。今の様にダンプで良質な土を運んだり、重機転圧の術がなかった時代には、堤防に桜並木を植え、花見客が歩いて締固め効果を期待したという一説が有ります。
 河川管理者は堤体の内部構造を把握するため数km毎にボーリング調査等を行っていますが、数kmが同一性状とは考えにくい。しかし、河川延長数十kmから数百kmにも及ぶ長さを詳細に調査する事は現実的では有りません。
 堤防が決壊するメカニズムは大きく5パターン存在します。
1. 越水 {河川水位が堤防高さを超えて流れ出す現象}(図-2参照)
2. 浸透 {河川水が堤体内に浸透して堤体の強度を減少させる現象}(図-3参照)
3. 洗堀 {河川水の勢いで堤体の土が洗い流される現象}(図-4参照)
4. みずみち {堤体内の構造物との隙間を水が流れる現象}
5. 液状化 {地震動により堤体地盤が液状化する現象}
この中でも、越水破壊が決壊原因の大部分を占めています。また、越水が起こると堤防はほぼ決壊します。しかし、土のうを積んで越水さえ食い止めれば決壊を防げると言えます。堤防が決壊すると、家の二階付近まで水に浸かってしまいますが、決壊を防げれば内水氾濫被害で収まる可能性が有ります。
最後に、堤防を決壊させない地域活動が盛んになる事を期待します。


図-1 築堤履歴の変遷イメージ

図-2 越水破壊

図-3 浸透破壊

図-4 浸食破壊
出典 応用地質株式会社