常慶寺住職柳川穆宗


頭は低く目は高く心は広く善をめざす
善き人にあって教えられ
悪き人にあって反省すれば
善悪共にありがたし


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子にまつわる諺



鼠が塩を引く
 ネズミが塩を引いて行くのは少量ずつだが、度重なっていつの間にか大量になることから、些細なことが積もり重なって大事になることのたとえ。

鼠壁を忘る壁鼠を忘れず
 ネズミは壁をかじったことなど忘れているが、壁にはネズミのかじった跡が残る。被害者の恨みは長く続くということのたとえ。

大山鳴動して鼠一匹(だいざんめいどうしてネズミいっぴき)
 前ぶれの大騒ぎの割に実際の結果が小さいこと。大きな山が大きな音をたてて地震を起こしたが、出てきたのはネズミ一匹だった。

窮鼠猫を噛む(きゅうそネコをかむ)
 絶体絶命の窮地に追い詰められて必死に反撃すれば、弱者も強者を破ることがあるというたとえ。

鼠の嫁入り
 あれこれ迷っても、結局は平凡なところに落ち着くとのたとえ。
 
急ぐ鼠は雨に会う
 少し待てば雨が上がって濡れなくて済むところを、急いで飛び出すので雨に降られる。慌てはいけないとのたとえ。

時に遇えば鼠も虎になる
 よい時期にめぐりあうと、つまらない者でも出世して権勢をふるうようになることのたとえ。

猫の留守は鼠の代
 ネコのいないときはモズミの天下、強い者のいないときは弱い者の世の中であるということ。



ねずみの嫁入り

 むかし、むかし、ある家のお倉の中に、お米を持って、麦を持って、粟を持って、豆を持って、たいそう豊に暮らしているお金持ちのねずみが住んでおりました。
 子供がないので神さまにお願いしますと、やっと女の子が生まれました。
 その子はずんずん大きくなって、輝くほど美しくなって、それはねずみのお国でだれ一人比べのない日本一のいい娘になりました。
 こうなると、もうねずみの仲間には見わたしたところ、とても娘のお婿さんにするような者はありませんでした。
 ねずみのお父さんとお母さんは、「うちの娘は日本一の娘なのだから、何でも日本一のお婿さんをもらわなければならない。」と言いました。
 そこでこの世の中でだれがいちばんえらいかというと、それは高い高い空の上から世界中をあかるく照らしておいでになるお日さまの外にはありませんでした。
 そこでお父さんはお母さんと娘を連れて、天へ上って行きました。

 そしてお日さまに、「お日さま、お日さま、あなたは世の中でいちばんえらいお方です。どうぞ私の娘をお嫁にもらって下さいまし。」といって、ていねいにおじぎをしました。
 するとお日さまはにこにこなさりながら、「それはありがたいが、世の中にはわたしよりもっとえらいものがあるよ。」とおっしゃいました。
 お父さんはびっくりしました。
「まあ、あなたよりもえらい方があるのですか。それはどなたでございますか。」
 「それは雲さ。わたしがいくら空でかんかん照っていようと思っても、雲が出てくるともうだめになるのだからね。」
 「なるほど。」

 お父さんはそこで、こんどは雲の所へ出かけました。
 「雲さん、雲さん、あなたは世の中でいちばんえらいお方です。どうぞ私の娘をお嫁にもらって下さいまし。」
 「それはありがたいが、世の中には私しよりももっとえらいものがあるよ。」
 お父さんはびっくりしました。
 「まあ、あなたよりもえらい方があるのですか。それはどなたでございますか。」
 「それは風さ。風に吹きとばされては私もかなわないよ。」
 「なるほど。」

 お父さんはそこで、こんどは風の所へ出かけていきました。
 「風さん、風さん、あなたは世の中でいちばんえらいお方です。どうぞ私の娘をお嫁にもらって下さいまし。」
 「それはありがたいが、世の中には私しよりもっとえらいものがあるよ。」
 お父さんはびっくりしました。
 「まあ、あなたよりもえらい方があるのですか。それはどなたでございますか。」
 「それは、壁さ。壁ばかりは私の力でもとても、吹きとばすことはできないからね。」
 「なるほど。」

 お父さんはそこで、こんどは壁の所へ出かけていきました。
 「壁さん、壁さん、あなたは世の中でいちばんえらいお方です。どうぞうちの娘をお嫁にもらって下さいまし。」
 「それはありがたいが、世の中には私しよりもっとえらいものがあるよ。」
 お父さんはびっくりしました。
 「まあ、あなたよりもえらい方があるのですか。それはどなたでございますか。」
 「それはだれでもない、そう言うねずみさんさ。私しがいくらまっ四角な顔をして、固くなって、頑張っていても、ねずみさんは平気で私しの体を食い破って、穴をあけて通り抜けていくじゃないか。だから私しはどうしてもねずみさんにはかなわないよ。」
 「なるほど。」

 とねずみのお父さんは、こんどこそほんとうにしんから感心したように、ぽんと手を打って、「これは今まで気がつかなかった。じゃあ私しどもが世の中でいちばんえらいのですね。ありがたい。ありがたい。」とにこにこしながら、いばって帰っていきました。
 そして帰るとさっそく、お隣のちゅう助ねずみを娘のお婿さんにしました。
 若いお婿さんとお嫁さんは、仲よく暮らして、お父さんとお母さん大事にしました。そしてたくさん子供を生んで、お倉のねずみの一家はますます栄えました。

    おしまい