里の、里唄

里の風と、里の人情の中に里唄がある
農作業も近代化され作業唄も消え去り
生活様式も変わり、子供たちの遊びも変わった
だけど唄は心の故郷である。

米倉の夕暮

作業唄(田植え、田の草取り、唐臼曳き、唐竿打ち)
1番
 お田にこや(肥え)しやアれ待の山、待つ(松)に来ん(紺)とはよく出来た。
2番
 今夜夜食はウドンかソバか、私しゃあなたのソバがよい。
3番
 締めて寝なされまだ夜は深い、明けりゃお寺の鐘が鳴る。


糸つむぎ唄
1番
 ブンブンブンや、やれブンブンや、ブンのかかア屁こき、
 ひっても七つ、ひらんでも七つ、ヤレブンブンや。


粉ひき唄
1番
 米をひけ米食わしょ、麦をひけ麦食わしょ、引臼引いてキッコンコ。


餅つきうた(祝唄)
1番
 正月にゃ 門に門松にゃしめ飾り 庭にゃ数多の米が降る。
2番
 お京橋の上から川下見れば魚舟がのぼる それを何よとたずねてみたら、
鯛や鯖や しくちやぼらや さても見事な 鯉、ふなや。
3番
 高い山から谷底見ればヨ 瓜や茄子の 花ざかりヨ。
4番
 高い山から飛んでくる鳥ヨ 銭のないのに 買お買おと言。
5番
 こなたお背戸にゃ 茗荷(ミョウガ)や蕗(フキ)や 冥加(ミョウガ)めでたや富家 繁盛。
6番
 めでためでたが三つ重なれば 鶴が御門に巣をかける、
 鶴が何と言うて巣をかける、御家御繁盛と言うてかける。
7番
 うれしめでたの若松様ヨ 枝が栄えりゃ葉もしげる。
8番
 お前百までわしゃ九十九まで 共に白髪の生えるまで。


子守り歌
1番
 ねんねんころころ、こうろころ、ねんねの子守りは、どこえ行った、
あの山越えて、里え行った、里のみやげに何もろた、でんで太鼓にしょぅの笛 、
おきゃがり小坊子に犬張り子、それをもろうて何にする、何にするがの富士の 山、
富士の山ほど育てあげ、性がよければ嫁にやろ、嫁の道具に何もたそ、
たんす長持はさん箱、これ程仕立ててあげるから、いのう戻ろうおっしゃんな 。
2番
 ねんねんころいち、ねんころろ、ころころ山の兎はなぜに耳が長いぞ、
枇杷(ビワ)の葉をくわえてそれで乳を飲んだから、それでお耳が長いぞ。
3番
 今日は二十九日明日はこの子の宮まいり、宮に参ったら何と言うて拝む、
一生この子がまめなよに。


手まり唄
 今日から始めて私しゃのけこの、かかえこなアしの、渡しゃどんどん、イチャ ドンドン。


セッセッセの唄
 一で、いとさんこっぷり下駄が頼りネ。
 二で、鶏りゃ朝餉が頼りネ。
 三で、酒飲みゃ盃が頼りネ。
 四つ、嫁さんは婿さんが頼りネ。
 五つ、隠居は炬燵(コタツ)が頼りネ。
 六つ、婿サンハ嫁サンガ頼りネ。
 七つ、泣く子はオ乳ガ頼りネ。
 八つ、山伏はほら貝が頼りネ
 九つ、乞食はお椀ガ頼りネ。
 十で、殿様お馬が頼りネ。


遊戯唄
<1番 >
向こう通りゃる伝吉様は、小さい時から馬乗り好きで、
馬に乗りょとて馬から落ちて、竹の切り株で手のうらさして、
医者にかけよか免者にかきょか、医者も免者も御無用でござる、
わしがまめならあの山越えて、向こう河原で小石を拾うて、
砂でみがいて鑢(ヤスリ)にかけて、おまん袂(タモト)にチョロリと入れて、
おまんここのは金かと思うた、金じゃごんせん小石でござる、
小石なりゃこそ重たけれ、ヒャツカケ、ヒャツカケ。
<2番 >
お月様なんぼ十三、九ツ、そりゃまだ若いぞ、若い時に子を生んで、
あの子を生んで、あの子を生んで、この子を生んで、お鶴におわせ、
お亀に抱かせ、その子はどうしたら、油ァ買いに、酢買いに、
油屋のかどで、すべってころんで、はなじを出した、そのはなじはどうした、
犬がねぶってしもうた、その犬ァどうした、太鼓に張って、スツテンドン、
あちらの方で、ドンドコドン、こちらの方で、ドンドコドン。
<3番 >
次郎ン坊太郎ン坊、馬ァどこえつないだ、段々畑の柿木につないだ、
何を食わしてつないだ、わらを食わしてつないだ、わらの中に何々、
赤い小袖が三つ三つ青い小袖が三つ三つ、白い小袖が三つ三つ、
三つになる若う様が、袴(ハカマ)を着るうとおっしゃった、
袴の裾(スソ)に何色つけようか、花色、桃色、花がよけりゃ、紺屋へ行かんせ 、
紺屋は名所、花所、一枝折ったらパツと散る、二枝折ったらパツと散る、
三枝折ったら日が暮れる、ヒャツカケ、ヒャツカケ。
<4番 >
向こう土手を、猿が三匹通りょうて、前の猿はもの知らず、
後ろの猿ももの知らず、いっち中の小猿が、ようもの知っとって、
なまず川にとびこんで、なまずを一匹見つけて、手で取るもかわいいし、
足で取るもかわいいし、瓢箪(ヒョウタン)もって押さえて、燈心でくくって、
線香もってにのうて、京の町へ出たら、知り人会うて、紺屋のせんちに駆け込 んで、
じりーバャアですべって、硬えバャアで、鼻うって、アン糞、アン糞、大明神 。
<5番 >
うちの裏の、ちさの木に、雀が三羽とまって、中の雀の言うことにゃ、
ととさんやかかさんは、どうこへいかしゃった、あの山越えて、
金山へ、金掘りにいかしゃった、一年たってもまだ見えず、
二年たってもまだ見えず、三年三月、状が来た、何としたやら読んでみな、
おさよに来いと書いてある、おさよ裸じゃ、やられまい、上には、
ちんちんちりめんの、下には、こんこんこうや染め、これ程仕立てあげうもの 。
<6番 >
あの子は良い子だ、ぼたもち顔で、きな粉つけたら、なおよかろ。
<7番 >
ひーふーみー、みよと言う子は、赤いせきだに、こんこの表、
はくなよごすな、おせきに見せな、おせき十六、今花ざかり。


数え唄
 一に、俵をふんまえて。
 二で、にっこり笑うて。
 三で、酒を造って。
 四つ、世の中よい様に。
 五つ、いつもの如くなり。
 六つ、無病息災に。
 七つ、何事ないように。
 八つ、屋敷をひろめたて。
 九つ、ここに倉を建て。
 十で、どっさりおさまった。

この「里のおもかげ」は田中一夫先生の里のおもかげを参考に幼年期、少年期の記憶から生まれたものです。