
青 春
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千曲川旅情の歌
島崎藤村
一
小諸なる古城のほとり
雲白く遊子悲しむ
緑なすはこべは萌ず
若草も藉くによしなし
しろがねの衾の岡辺
日に溶けて淡雪流る
あたたかき光はあれど
野に満つる香りも知らず
浅くのみ春は霞みて
麦の色わずかに青し
旅人の群れはいくつか
畑中の道を急ぎぬ
暮れ行けば浅間も見えず
歌哀し佐久の草笛
千曲川いざよう波の
岸近き宿にのぼりつ
濁り酒濁れる飲みて
草枕しばし慰む
二
昨日またかくてありけり
京もまたかくてありなむ
この命なにをあくせく
明日をのみ思ひわづらふ
いくたびか栄枯の夢の
消え残る谷に下りて
河波のいざよふ見れば
砂まじり水巻き帰る
鳴呼古城なにをか語り
岸の波なにをか答ふ
過し世を静かに思へ
百年もきのふのごとし
千曲川柳霞みて
春浅く水流れたり
ただひとり岩をめぐりて
この岸に愁を繋ぐ
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初恋
島崎藤村
まだあげ初めし前髪の
林檎のもとに見えしとき
前にさしたる花櫛の
花ある君と思ひけり
やさしく白き手をのべて
林檎をわれにあたへしは
薄紅の秋の実に
人こひ初めしはじめなり
わがこころなきためいきの
その髪の毛にかかるとき
たのしき恋の盃を
君が情に酌みしかな
林檎畠の樹の下に
おのづからなる細道は
誰が踏みそめしかたみぞと
問ひたまうこそこひしけれ
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春望
杜甫
国破れて山河在り
城春にして草木深し
時に感じては花にも涙を濺ぎ
別れを恨んでは鳥にも心を驚かす
烽火 三月に連なり
家書 万金に抵る
白頭 掻けば更に短く
渾て簪に勝えざらんと欲す
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春暁
孟浩然
春眠 暁を覚えず
処処 啼鳥を聞く
夜来 風雨の声
花落つること 知んぬ多少ぞ
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偶成
朱熹
少年老い易く 学成り難し
一寸の光陰 軽んずべからず
未だ覚えず 池塘春草の夢
階前の梧葉 すでに秋声
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七訓
真言宗智山
1、希望は未来にしか立てられない
2、夫婦とは、向き合うものてはなく、並んで同じものを見るものである
3、花は半開、酒は半酔
4、お世辞はうそを含み、悪口は真実を付く
5、人生とは、失敗もできる訓練の場
6、過去は変更も否定も出来ないが深く学ぶ知恵を得られる
7、人生は結果でなく過程である
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福沢諭吉訓
世の中で一番楽しく立派なことは、一生涯を貫く仕事を持つこと
世の中で一番みじめなことは、教養のないこと
世の中で一番寂しいことは、仕事がないこと
世の中で一番醜いことは、他人の生活を曹゙こと
世の中で一番尊いことは、人のために奉仕して決して恩に着せぬこと
世の中で一番美しいことは、全てのものに愛情を持つこと
世の中で一番悲しいことは、うそをつくこと
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つもりがい十ヶ条
1、高いつもりで低いのが、教養
2、低いつもりで高いのが、気位
3、深いつもりで浅いのが、知識
4、浅いつもりで深いのが、願望
5、厚いつもりで薄いのが、人情
6、薄いつもりで厚いのが、面の皮
7、強いつもりで弱いのが、根性
8、弱いつもりで強いのが、自我
9、多いつもりで少ないのが、分別
10、少ないつもりで多いのが、無駄
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ふるさとは
室生犀星
ふるさとは遠くにありて思ふもの
そして悲しくうたふもの
よしや
うらぶれて異土の乞食となるとても
帰るところにあるまじや
ひとり都のゆふぐれに
ふるさとおもひ涙ぐむ
そのこころもて
遠きみやこにかへらばや
遠きみやこにかへらばや
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ねがい
坂村真民
ただ一つの花を咲かせ、そして終わる
この一年草の一途さに触れて生きよう
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言葉なき恋歌
ヴェルレーヌ
巷に雨の降るごとく、わが心にも涙ふる。
かくも心ににじみいる、このかなしみは何やらん?
やるせなき心のために、おお、雨の歌よ!
やさしき雨の響きは、地上にも屋上にも!
消えも入りなん心の奥に、ゆえなき雨に涙す。
何事ぞ!
裏切りもなきにあらずや?
この喪そのゆえの知られず。
ゆえしれぬかなしみぞ、げにこよなくも堪えがたし。
恋もなく恨みもなきに、わが心かくもかなし。
しとしとと街に降る雨は、涙となって僕の心をつたう。
このにじみ入るけだるさは、いったいどうしたことなんだ?
舗道にそそぎ、屋根をうつ、おお、やさしい雨よ!
うらぶれたおもいできく、おお、雨の歌のふしよ!
ゆきどころない僕の心は、理由もしらずに涙ぐむ。
楯をついたりいたしません。
それなのになぜこんな応報が・・・・・・・
なぜということがわからないので、一しお、たえがたいこの苦しみ。
愛も、憎しみも棄てているのに、つらさばかりでいっぱいなこの胸。
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結婚歌
吉野 弘
二人が睦まじくいるためには
愚かでいるほうがいい
立派過ぎないほうがいい
立派過ぎることは長持ちしないことだ
気づいているほうがいい
完璧を目指さないほうがいい
完璧なんて不自然なことだと
うそぶいているほうがいい
二人のうちどちらかが
ふざけているほうがいい
ずっこけているほうがいい
互いに非難することがあっても
非難できる資格が自分にあるかどうか
あとで疑わしくなるほうがいい
正しいことを言うときには
少し控えめにするほうがいい
正しいことを言うときには
相手を傷つけやすいものだと
気づいているほうがいい
立派でありたいとか
正しくありたいとか言う無理な緊張には
色目を使わず、ゆったりゆたかに
光を浴びているほうがいい
健康で風に吹かれながら
生きて行くことの懐かしさに
ふと目が熱くなるのが
黙っていても、二人に分かるのであってほしい。
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青春
サムエル・ウルマン
青春とは、人生のある期間ではなく心の持ちかたを言う。
薔薇の面差し、紅の唇、しなやかな手足ではなく、たくましい意思、ゆたかな想像力、炎える情熱をさす。
青春とは、人生の深い泉の清新さを言う。
青春とは、臆病さを退ける勇気安きにつく気持ちを振り捨てる冒険心を意味する。
ときには、20歳の青年よりも60歳の人に青春がある。
年を重ねただけで人は老ない。
理想を失ったとき初めて老いる。
歳月は皮膚にしわを増すが、情熱を失えば心はしぼむ。
苦悩、恐怖、失望により気力は地に這い、精神は芥になる。
60歳であろうと16歳であろうと人の胸には、驚異に魅かれる心、おさな児のような未知への探求心、人生への興味の歓喜がある。
君にも吾にも見えざる駅逓が心にある。
人から神から美・希望・よろこび・勇気・力の霊感を受ける限り君は若い。
霊感が絶え、精神が皮肉の雪におおわれ、悲嘆の氷にとざされるとき20歳であろうと人は老いる。
頭を高くあげ希望の波をとらえる限り、80歳であろうと人は青春にして己む。
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二度とない人生だから
坂村真民
二度とない人生だから
一輪の花にも無限の愛をそそいでゆこう
一羽の鳥の声にも
無心に耳をかたむけてゆこう
二度とない人生だから
一匹のこおろぎでも踏み殺さないように心して行こう、どんなにか喜ぶことだろう
二度とない人生だから
一ぺんでも多く便りをしよう、返事は必ず書くことにしよう
二度とない人生だから
まず一番身近な者たちにできるだけのことをしよう
貧しいけれど
心豊かに接してゆこう
二度とない人生だから
つゆくさのつゆにもめぐりあいの不思議を思い、足をとどめてみつめてゆこう
二度とない人生だから
のぼる日、しずむ日、まるい月、かけてゆく月四季それぞれの星々の光にふれてわが心を洗い清めてゆこう
二度とない人生だから
争いのない世の実現に努力し、そういう詩を一遍でも作ってゆこう
私が死んだら
あとをついでくれる若い人たちのために、この大願を書きつづけてゆこう
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心十戒訓
1、人を大切にする人は、人から大切にされる。
2、人間関係は、相手の長所と付き合うものだ。
3、人は何をしてもらうかより、何が人に出来るかが大切である。
4、仕事では頭を使い、人間関係では心を使え。
5、挨拶は、されるものではなくするものである。
6、仕事は言われてするものではなく、探してするものである。
7、わかるだけが勉強ではなく、出来ることが勉強である。
8、美人より美心
9、言葉で語るな、心で語れ。
10、良い人生は、良い準備から始まる。
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