現代社会は、ストレス社会といわれています。「ストレスのない者は、死者だけだ」といわれているくらい、生きている間は、ストレスからのがれることはできません。
ストレスが関係している病気には、高血圧、胃・十二指腸潰瘍、過敏性腸症候群、気管支喘息、過換気症候群、慢性頭痛などだけでなく、がん、免疫力の低下、ノイローゼ・うつ病などの精神的な病気まで多彩です。ストレス病は、最後の現代病といわれています。
今回は、ストレス解消法につき考えてみました。
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1) |
ストレス度(ホームズとレイ、1967)
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1 |
配偶者の死 |
100 |
2 |
離婚 |
73 |
3 |
夫婦別居生活 |
65 |
4 |
拘留 |
63 |
5 |
親族の死 |
63 |
6 |
個人のけがや病気 |
53 |
7 |
結婚 |
50 |
8 |
解雇・失業 |
47 |
9 |
夫婦の和解・調停 |
45 |
10 |
退職 |
45 |
11 |
家族の健康上の大きな変化 |
44 |
12 |
妊娠 |
40 |
13 |
性的障害 |
39 |
14 |
新たな家族構成員の増加 |
39 |
15 |
仕事の再調整 |
39 |
16 |
経済状態の大きな変化 |
38 |
17 |
親友の死 |
37 |
18 |
転職 |
36 |
19 |
配偶者との口論の大きな変化 |
35 |
20 |
1万ドル以上の借金 |
31 |
21 |
担保・貸付金の損失 |
30 |
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22 |
仕事上の責任の変化 |
29 |
23 |
息子や娘が家を離れる |
29 |
24 |
親戚とのトラブル |
29 |
25 |
個人的な輝かしい成功 |
28 |
26 |
妻の就職や離職 |
26 |
27 |
就学・卒業 |
26 |
29 |
生活条件の変化 |
25 |
29 |
個人的習慣の修正 |
24 |
30 |
上司とのトラブル |
23 |
31 |
労働条件の変化 |
20 |
32 |
住居の変更 |
20 |
33 |
学校をかわる |
20 |
34 |
レクリエーションの変化 |
19 |
35 |
教会活動の変化 |
19 |
36 |
社会活動の変化 |
18 |
37 |
1万ドル以下の借金 |
17 |
38 |
睡眠習慣の変化 |
16 |
39 |
団らんする家族の数の変化 |
15 |
40 |
食習慣の変化 |
15 |
41 |
休暇 |
13 |
42 |
仔細な遺法行為 |
11 |
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これは、日常生活上の出来事をストレスの大きさ別に点数化したものです。アメリカでの報告ですが、日本人にもあてはまります。配偶者の死が100点と最も高い点数ですが、結婚50点、個人的な成功28点など慶事もストレスとなっています。
過去1年間のストレス度の合計点が、300点以上なら80%以上、300~150点では50数%、150点以内なら30数%に、翌年に何らかの健康障害が生じる危険性があるというデータがでています。一度、自分のストレス度をチェックしてみて下さい。
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2) |
気分転換法
日本人36,000人を対象にした保健衛生基礎調査で、気分転換の方法は、男では35歳までは「趣味・スポーツ」が最も多く、35~65歳までは「酒をのむ」が最多でした。しかし、65歳以上になると、「じっと耐える」、「寝てしまう」が圧倒的に多くなります。
女性では、全年齢をつうじて「おしゃべり」が断トツで多数を占めます。ただ、65歳以降は、「じっと耐える」、「寝てしまう」がふえてきます。
女は男の3倍は「しゃべる」といわれています(うちの家内は、たぶん10倍はしゃべっていると思います)。その理由は、男の子には、妊娠後期にテストステロン・シャワーという男性ホルモンを多量にあびる時期があります。この時、左脳が発達抑制を受けます。左脳には、言語中枢があるため、相対的に女の子のほうが言語が発達し、よくしゃべるようになるのです。女性は生来的に「しゃべる」ことで、脳を活性化し、ストレスが解消できるようになっているのです。
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3) |
ストレスに対する心構え
西欧では、フロイトにはじまる精神分析学が主流で、ストレスを「認識」し、状況を「分析」し、目標をたてた「行動」をとることによって、ストレスに対処することが推奨されています。積極的にストレスに対応し、「異物としてのストレスを排除する」ことが、根本的な治療につながるという考えです。
ストレス源となる相手に対しても、積極的に対話し、問題解決していく。これが正攻法です。
ただ、我々日本人は、論理的な分析や対応は一般的に不得意です。物事に白黒をつけるよりも、灰色のままで置いておく方を好みます。
日本人に向いた対処法として、昭和の初期に、精神科医の森田正馬が、神経症の治療法として開発した「森田療法」をご存知ですか? 森田は、神経症の原因となる不安・葛藤は、本来人間的なものであり、あえて除去する必要はないと言っています。ストレスを含め、「あるがまま」に事実を認めることが、まず第一なのです。
そしてその次に、ストレスの原因はそのままにして、それから逃避するのではなく、自分のやりたいことをやっていくのがいいのです。それが「自己実現」であり、「目的本位」の生き方であると説きます。
例えば、職場にいやな上司がいたり、家に顔もみたくないような姑がいたとしても、その事実を「あるがまま」に認めることが大切です。その上で、自分のやりたい仕事や家事に努力するのが、より良く生きることであり、それを続けていくうちに、自然にストレスも消えていくものといわれています。
あなたには、どちらが向いていますか?
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4) |
趣味
生涯をつうじて、仕事と趣味の両方をもつのが、健康長寿の秘訣といわれています。ただ、仕事ばかりしている人には、夏目漱石のいうように「仕事のなかに趣味が感じられるもの」が、仕事として適していると思います。
現在および過去に、社会の第一線でばりばり働いている(いた)人の趣味を調べてみました(敬称略)。
小渕恵三(芸術鑑賞、牛の置物収集)、小泉純一郎(オペラ、歌舞伎、映画鑑賞)、白洲次郎(ゴルフ、車、木工細工)、大賀典雄(ジェット機操縦)、中野孝次(囲碁)、五木寛之(旅行―仕事も兼ねて、車)、養老孟司(昆虫採集)、河合隼雄(フルート演奏)、羽生善治(水泳、チェス)、大橋巨泉(ゴルフ、海外生活)、片岡鶴太郎(墨彩画)、石坂浩二(プラモデル)、白洲正子(生け花、着物収集)、向田邦子(料理)、鶴見和子(和歌、日舞)、フジ子へミング(刺繍、絵)
みんな、超多忙な人たちばかりですが、多彩な趣味をもっています。なかにはプロ級の人もいます。男性では、一人で没頭するものが多いようですが、女性では、仲間を意識したものが多い傾向にあります。
趣味は好きなこと、楽しいことなら何でもいいのです。ストレス解消のためには、子供の頃にしていた遊びや、子供の頃からしたかった夢などがいいといわれています。
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5) |
生活習慣の改善も必要
生活習慣の改善もストレス解消のためには大切です。食事、睡眠、入浴、運動などにも留意して下さい。それらの注意点は、前回まで述べてきたとおりです。
“一日のストレスは、入浴と睡眠で、一週間のストレスは、趣味で、一年間のストレスは休暇でとれ” といわれています。
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6) |
梁塵秘抄より
遊びをせんとや生まれけむ 戯れせんとや生まれけん
遊ぶ子供の声きけば わが身さへこそゆるがるれ
これは平安時代の末期に、庶民の間で歌われた今様(いまよう=当時の流行歌)で、後白河法皇が編纂した梁塵秘抄におさめられています。ひとは、「遊ぶ」ために生まれてきたのです。無心に子供のように「戯れ」ているときには、ストレスとは無縁です。
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