松坂帰庵の書

上中組 大森正司

わが家に祖父の代から伝わる貴重な品です。
 松坂帰庵は真言宗法界院の僧で、資性温雅・高潔で
“今良寛”と呼ばれた。独特の書体を竹筆で枯れた字を書く。

<大巧若拙>

 出典は老子第45章の『大直は屈するが若く、大巧は拙なるが若く、大弁は訥なるが若し』の一節。
 『最もまっすぐなものは曲がったように見え、一見、稚拙なように見えるものこそ技巧の極地である。さように真の雄弁というのは訥弁と変りがない。(寡黙なぐらいでちょうどよい)』の意味。

<信為萬事本>

 原典は、1060年成立の中国の史書『新唐書』に由来する。
 「信を万事の本と為す」と読み、山岡鉄舟が西郷隆盛とのやりとりのなかで書したものとして有名。
 「信」とは、お互いを信じ合うことであり、また、自らを信じることである。人としてあるべき姿を具現している。