明治三年津高郡久米村定書ーその1ー


7,8年前 倉敷に御住まいの方から解読を頼まれた文書が手元に残っている。この文書は、深井文平という方が明治三年に書き残されているものです。深井氏は、久米村の庄屋を勤められていた方であり、表題は、「在中年中行事冠婚葬祭礼式申定書抜」です。
十六頁に及ぶ文書で今回は1月から6月までの文章を紹介する。
文章は現代風に表記し、カッコ内は、私の加えた脚注です。全文を何回かに分けてご紹介します。


正月
1.門松並びに、盛り砂相止め申すべき事
1.門飾り 輪飾りの事
  但し、飾り物は神馬草(ホンダワラ) 山草(ウラジロ) だいだい
1.年頭の礼 親類のほか一切継合の事(付き合うなと書きたかったのではないかと思う)
1.休日 元日2日3日(正月) 7日(7日日雑炊の日) 11日(鍬初め) 15日(小正月)

2月
1.歳賀 61歳より相祝い申すべき事 但し親子兄弟叔父伯母従兄弟並びに本家分家の外贈り物並びに賀宴に相招きの儀相成らず候の事
1.休日 朔日(1日 ひてえ正月) 社日(春分の日に最も近い戊の日 地神さまの祭り) 普賢祭(普賢菩薩の御祭り)

3月
1.紙雛並びに、掛絵のほか相成らず。たとえ持ち来たり候とも過分の雛飾りは容赦の事 つけたり、初雛の贈り物並びに客呼びは、相成らず。尤も子兄弟本家分家は格別の事 但し身元格別によきもの10歳以下の子どもににぎり飯粗末の煮しめ出す事苦しからず
1.菱餅とりつかわし相ならざるの事 但し親子の間は格別のこと。
1.新雛人形町方売り出しの儀、おちょうじ仰せ付けられたき事
1.四日裏節句と言い、山野に参り酒豪がましきき儀相やめ申すべきこと。 (この日に舟ゆうさんも行われていたのではないかと思う)
1.休日 3日(雛の節句) 春祈祷 籾播き日

4月
 若連中と唱え15,6歳より25,6歳まで仲間を定め春秋両度合講を催す。右の入用近来多分に相成り貧者どもにてもよんどころなく右付き合いにて仲間に入り 入用割合うけを難渋いや増し且つ、養子など引き受けの節樽入れ歓びと唱え過分の入用入増す。そのほか年中諸付き合い入用少なからず 他方より参じ候者等はわけて右付き合いを迷惑いたし、ついには、不縁の下と相成り一家滅亡のはしりと相成り候儀多くこれあり候間 以後若連中と仲間を相定め候儀お国内一行ごちょうじ仰せらたき事
1.休日 3日(招魂祭) 8日(花祭り) 13日

5月
1.菖蒲飾り物一切相成らずのこと 但しこの分町方にて売り出し候者ごちょうじ仰せ付けられたき事 
1. 上 紙幟 1本 申幟 1本
   中 紙幟 1本
   下 申幟 1本
 但し、紙幟といえども一布幟より大なるは相成らぬこと。もっとも持ち来たりの分は、苦しからず。菖蒲の節贈り物並びに客呼びなど、上巳同然の事
1.粽 柏餅とりつかわし相成らずのこと
1.葬祭客呼び親類の外相ならずのこと ただし料理の向き土地産物 瓜 茄子 干し海老 煮物粗末の酢飯一鉢のこと
1.休日 5日(菖蒲の節句) しろみて(田植えの終了日) 夏祈祷

6月
1.暑中勤合一切相やめべく申すこと
1.年賀請厄刎厄とも内祝いのほか親類たりとも親子の外客呼び無用
1.休日 朔日 龍王祭(虫食いで読み取れない) 蒸し送り

今回は此処までとしたい。明治時代といえどもまだまだ古い時代の名残りが強い文書である。原文のコピーを持っていますので必要な方はご連絡下さい。

文責 佐藤芳範