「原の自然情報」  2004年11月〜12月


岡山県自然保護推進員  十川 巡一

珍しいトビケラ〔ヤマトビイロトビケラ〕
 11月下旬そろそろホタルトビケラなどが羽化する季節です。
 トビケラは、幼虫の時期水の中で過ごします。まるでミノムシのように木の葉や水草、小さな石や砂粒で筒状の巣をこしらます。
 サナギが羽化するときは巣から出て水面で羽化するのが多いようですが、中にはホタルトビケラのように水から這い出てサナギになる種もいます。ところが、 牧石学区のとある山の中に、日本でも珍しい陸生のトビケラが棲息しています。
 2003年4月、陸貝に興味を持っていた息子の和幸が林の中で巻き貝を探していた時に見つけました。土をほじくると、ころころと出てきます。山で観察したところ、木漏れ日の当たるところを好み、活発に動き回り、逆に水があるところは嫌います。コナラの枯れた葉やコナラの花などを好んで食べるようです。
 家で飼ったときに「椿の花びらを湯通しして与えると、とてもよく食べた」と息子が嬉しそうに笑っていました。その時はまだ名前がわからなかったので、佐伯町の岡山県自然保護センターに持って行き、聞いてみると、やはりわからないので研究員の森さんが専門家に送って名前を調べて下さいました。「陸生のトビケラでヤマトビイロトビケラです。」との返事がありました。普通トビケラは水性なので、とても珍しいトビケラなのです。岡山県では息子の和幸が最初の発見者となりました。
 日本で最初に見つけた人は神奈川県に在住のトビケラを専門としておられる野崎隆夫さんです。2001年に発見されヤマトビイロトビケラと名ずけられまし た。野崎さんが見つけた所は、どこも標高800m以上の場所ですが、岡山で見つかったのは標高約60〜100mの場所です。
 昨年の秋にちょうど岡山県で水生動物の研究者の集まりがあり、野崎さんが「ぜひつれて行って欲しい、そんな低いところは初めてだ」と言うことで、山の中を案内しました。
 今年も来たいと言っておられましたが岡山に3時間ほどしか居れなかったので行けなかったと残念がっておられました。
 今年はカゲロウを専門としている関西学園の吉鷹先生と学生四人を案内し、羽化して間がないヤマトビイロトビケラの飛び舞う姿を見ることが出来ました。 「日本でも、いや、世界的にも珍しいトビケラです。」と言われました。
 林の中では〔11月23日〕ヤマトビイロトビケラが飛び始めていました。(幼虫はホタルトビケラを小さくしたような形ですがよく似ています。)成虫もや はり日影よりも木漏れ日の当たるところに多く飛んでいました。
幼虫の時期水の中に棲息する水性のホタルトビケラ 陸性のヤマトビイロトビケラの幼虫が好む場所
幼虫の時期水の中に棲息する水性のホタルトビケラ 陸性のヤマトビイロトビケラの幼虫が好む場所
手の上は暖かいのですぐに動き出す幼虫 前日雨が降ったので水を嫌い葉の上に出ている幼虫
手の上は暖かいのですぐに動き出す幼虫 前日雨が降ったので水を嫌い葉の上に出ている幼虫
ヤマトビイロトビケラがよく飛んでいる林の中 羽化して間がないヤマトビイロトビケラの成虫
ヤマトビイロトビケラがよく飛んでいる
林の中
羽化して間がないヤマトビイロトビケラの
成虫♂