大師講の祭祀用品

大師講

大師講には諸説あり、地方によってその有様は異なるようだが、当地での大師講の伝統的やり方は概ね次のとおりである。

真言宗の開祖である弘法大師をお祀りするため、地域の数世帯~十数世帯で講連中を構成し、定期的に各戸持ち回りで当番家の座敷に簡

単な祭壇を設え、講連中(各家の代表者)が集まって祀りごとをした後で簡単な飲食をするという「大師報恩と近隣親睦」の行事である。

出村では、昭和30年ごろまでは行われていたと思われるが、東西講組とも平成24年に至り正式に閉講し、関連の祭祀用品は丸端の大

師堂で保管~伝承することとなった。

出村にも東西二つの大師講があり、関連する主要な仏具類にはそれぞれに次の物がある。

  • 仏画三幅対の掛け軸
  • 打ち鐘
  • 灯明、香具
  • 供物用具類

これらのうち、時代考証に資しうるのが三幅対のお軸と打ち鐘である。

 

■仏画三幅対

修復成り大師堂に奉納された東講組の三幅対

不動明王・十三仏・弘法大師像が描かれた三幅対の掛け軸で、西講組のものは箱書きに慶応4年(1827年)の揮毫があり、方や東講組のものも同時代の作品と思われるが昭和6年に再調(表装の仕立て直し)をした旨の箱書きがある。

令和2年12月に至り、東講組のお軸は90年振りに再々調(二度目の仕立て直し)を行うことになり、匠の尽力と技量でなんとか往時の尊像を偲べる域まで復元することができ、令和3年2月に大師堂において所要経費奉加協賛者にお披露目することができた。(前ページの写真)西講組のお軸については、「紙質退化と描画の損耗・部分欠落等の損傷が著しく修復不能」との表具匠裁定もあり、そのままの状態で伝承することとした。

 

■打ち鐘

大師講備品の一つ「打ち鐘」(写真は西講組の鐘)
鐘の縁には、下記のように刻まれている。

上道郡海面出村西
文政十歳四月吉日 西村和泉守作

 

この鐘は、お看経(かんき)をあげるときのお鈴(りん)のように使ったのだと思うが、木槌で叩くとかなり大きな音が響きわたり、昔の自宅葬での出棺の合い図に使われていたのは、他ならぬこの鐘だった。

今は、8月23日のお地蔵さんの日の夕刻、子どもたちが参拝を促して触れ歩くときに使うしか出番がなくなってしまった。

いずれも、昔の名残りを今に伝える歴史遺産になってしまったが、古きよき時代にひたすら世の安寧を乞い祈った村人たちや地域信仰の有様を偲ぶ得がたい証として、大切に後の世に伝えてほしいものだ。

 

(文・写真:小野田)

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