役者魂” その三
投稿日:2025年6月25日
このシリーズ最終回です…暑さが凄い昨今…チョッと冷たい話を…
若き北大路欣也さんと高倉健さんの共演(競演)でのビックリするような…まさに”役者魂”としか言い様がないシーンがありました あの名画「八甲田山」です…陸軍士官学校出身の中隊長を健さんが…下士官から叩き上げ、苦労人の中隊長を欣也さんがそれぞれ演じました…三年間に渡る過酷な撮影現場はまさに…雪と嵐の闘い…気を抜くと本物の遭難…そんな必死のシーンの連続だったそうです…いよいよ撮影も終盤、クライマックスのシーンの撮影準備が勧められていました…欣也さんの妻を演じる”栗原小巻”さんが寒さで震えるロケ現場の片隅でシナリオや台詞の確認をしています…そこへ欣也さんがフラッと現れました…軍服礼装(軍人の死装束)姿で…撮影開始四時間前の事です…スタッフの「まだ早すぎますよ…」の声を背に欣也さんの姿は手を振りながら何処へと消えました…
サー撮影開始です…雪の八甲田で遭難…慚愧の念で舌を噛みきって自決した北大路中隊長…その棺に寄り添う栗原小巻さん…そこへ雪まみれの阿修羅のごとき高倉中隊長が現れ…棺の中の北大路中隊長の亡骸との対面シーンの撮影が始まりました…カメラが走り出しました…健さんの手が棺の蓋を開けます…当初の撮影プランでは…健さんが棺の蓋を開ける…健さんの顔のクローズアップ…そこでカットの予定でした…北大路中隊長の死装束シーンはその日の夕方のワンカット撮影の予定でした…蓋を開けた時の健さんの驚き顔…まさに驚愕(きょうがく)の真顔…健さんのあの顔…今でも私の心のスクリーンに印象深く刻まれています…健さんはその後の台詞を忘れてしまう程の驚きのシーンでした…
健さんが棺の蓋を開けた時…見たのは欣也さんの死に顔でした…本物の…いる筈のない欣也さんが棺に眠っている…あのビックリした顔があの名シーンになりました…
監督やスタッフも全員がビックリして腰を抜かしたそうです…欣也さんは…氷より冷たい棺の中で…四時間も…死んでいたそうです…健さんはセリフを忘れ…「あの雪の八甲田で確かに見ました…」以外の台詞は出てこず…ただ棺を見つめるだけ…しばらくして…監督の「OK!」の叫び声にしばらくは誰も反応しなかった…出来なかった…あの映画にこんなエピソードが隠されていたのです! さすが”大役者魂”…ただもんじゃない!少しは背筋が冷たくなりましたか…はたまた感動で熱い涙が…人生に飽きたらない方はもう一度あのシーンを 😭
記 北公民館講座ジェントルマン生きがい喫茶常連客 福森 芳郎
カテゴリー:おん野の滴
御野学区連合町内会