“なおしもん”と”人となり”

投稿日:2024年6月16日

昔〃、七尾でのシルバーサッカー大会にキャンピングカーひとり旅で参加、その後 能登を訪れた

深夜、駐車場近くの足湯で酔顔を冷ましていると七十代とおぼしき男性が現れ、足を浸けた…

世間話から始まり、こんにゃく談義がはじまった…その方は輪島塗職人でさっきまで仕事中だったとか…「深夜までどんな仕事を…」という私の問いに彼は答えた
「”なおしもん”で困ってる…」と言った、「”なおしもん”とはな、使い古し傷付き縁の欠けた輪島塗を修復、色を塗り替え、模様を付け足し新たな味を付けてお客様にお返しするもんだ…」と無愛想に答えた、しばらくして…

「わしが留守の時、店のもんが預かったんで…その人の人となりがわからず、迷ってる…」と話した「人となりがわからんと直し様がいがない…」

「人となりって…なんですか?」
私は訊いた、
彼は答えた「その方の過去、現在、未來のことじゃ…どんな生い立ちで、今なにが楽しくて、将来の夢は何かじゃ…とわしは思う、それがわからんと直しがいがないのじゃ…」彼は押し黙ったまま足で湯をけった

八十近くなり、時々その足湯の出来事を思い出す…あくる朝市、彼から買った輪島塗のお椀には今も傷も塗も15年前と変わりなかった…

自分自身が”なおしもん”になり、
どの様な仕上げ直すか…能登のあの足湯の名人に訊ねてみたい…

記 北公民館ジェントルマン喫茶常連客 福森芳郎

カテゴリー:おん野の滴

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