「ふるさと平井」シリーズ№6を掲載
投稿日:2020年9月1日
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平井学区コミュニティ協議会発行
「ふるさと平井」から
(シリーズ№6 p.49-52)
第3章 池田藩政下の平井
3.広がりゆく耕地(干拓)
戦乱に明け暮れた時代が終わった近世初期から、領主たちは内治に力を注ぎ、人口の増加と新田開発を最重要課題として、財政的基盤の充実を図った。
備前藩においても前池田藩主池田忠雄(かつ)時代から積極的に干拓をすすめ、移封後の光政をはじめ代々藩主は、児島北辺に広がる干潟の開発を意欲的に推進した。特に光政は、新田開発に対し年貢の率(免)や反当りの収穫見積額を軽くするなど、さまざまな保護政策をつくり督励した。
新田開発は、開発主側から類別すると藩営(官営)と民営に大別され、民営開発は更に土豪開発・村請(うけ、百姓寄合)・町人請などに分けられる。岡山藩では初期のものは殆んど民営新田で規模は小さいが、17世紀後半からは藩営の大規模な開発が行われている。
次に平井・湊地区及び南東に広がる新田について略記する。
平井・湊地区の新田
操山と旭川の堤防に挟まれた地域は順次堆積がすすみ、16世紀後半から17世紀にかけて近在の者達によって開発され、耕地ができたものと思われる。記録がないので確かなことは分らないが、第1章の地名のところで述べたように、南新田とか、北新田・浜などの小字が残っていることからも窺える。
これとは別に寛永10年(1633)「平井川崎新田」が干拓されている。開発主は不明だが民営新田で面積約22町歩、旭川沿いの今のバイパス南、平井荘苑・操南団地一帯である。この新田は後に平岡新田と称し、貞享3年(1686)平井村の枝村となっている。
また湊地区では山沿いの南の地域が開発されている。17町歩の東湊新田、31.5町歩の西湊新田で、何れも慶安3年(165O)に完成している。この東湊新田も福江と称し貞享3年(1686)湊村の枝村となっている。
平福新田
これより先の寛永元年(1624)池田忠雄時代に干拓された平福新田は、平井と深い繋りがある。旭川を挟んで対岸に位置し、面積約20.6町歩の新田である。藩営新田ではあるが、当時の平井村の名主が村の二男・三男の屈強な若者に開墾させ、その後それぞれ分家定住させている。以後も平井村の名主が諸事を取り仕切り、また、当時御野郡でありながら平井村と同様玉井宮を氏神としてお祭りしている。その頃から続いている家では平井村と同じ姓の人が多いということである。
倉田新田
平井・湊地区に隣接する地域で、西から倉田・倉富・倉益と呼ばれている旧操陽村に当たる。当時隠居していた光政が津田永忠に命じて開発させ、延宝7年(1679)に完成している。総面積329町歩、石高約5000石の藩営新田で、従来のものに比べ最大規模の新田である。この新田への用水確保のための倉安川も同時にほぼ開通している。
この新田開発の経費については、藩財政窮乏のため、津田永忠の建議によりはじめて社倉米(しゃそうまい)の制度を導入している。この制度は光政の長女(奈阿子)の結婚持参金(化粧料)を借用し、その利息で運用するというもので、その後諸種の藩営土木事業に活用されている。
沖新田
倉田新田の南に広がる沖新田は、2代藩主綱政の命により津田永忠が綿密な計画と卓越した指導力で完成した藩営新田である。元禄5年(1692)正月に着工、平井から三蟠を経て九蟠に至る延々12kmに及ぶ堤防の築造をはじめ、百間川の延長工事、多くの樋門の建設などを含め翌元禄6年(1693)12月に竣工した。堤防工事は1番から9番までの丁場に分け互いに競わせる形で進められ、石材は対岸の児島の山から切り出し、普請に投入した人夫は延103万8867人に及んだ。こうして面積1918町歩、石高3万2850石余という桁外れな大規模開発を僅か2年足らずの短期間で成し遂げたわけである。沖新田の開発工事に当っては、平井村は資材・食料などの兵站基地的な役割を果たしたようであり、また、平井にかかわりのある悲話(後記)も残されている。
なお、写真で紹介している沖新田絵図は3.3平方メートル程の大きなもので、文政元年(1818)12月、 専門的に測量などを学んだ上道郡津田村外七番の鹿之介という人が、実測の結果を10間(約18m)を1分(約3.3mm)に縮小して描いた正確な絵図である。
こうして寛永の中頃 (1630頃)から約60年に亘って続けられた旭川と吉井川に挟まれた河ロ付近の新田開発は、沖新田の完成で一応終わることとなる。
今、湊の山に立って南方遥かに広がる広大な干拓地を望むと、現代のような科学技術に頼れない時代に、波の間からこの肥沃の大地を浮かび上らせた先人の知恵と努力に、驚きと感謝の念を禁じ得ない。
(つづく)
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