2005年(平成17年)9月27日
-5-

Ⅴ 腸の健康-おなら対策 

 おならの語源は「鳴る」からきています。「鳴る」に接頭語「オ」をつけて、「オナル」「オナラ」となりました。英語では、breaking windといい、同じような発想です。
 外来にこられる患者さんのなかで、意外に多いのが、男の人ではガスが多くて困る(どこででもでて困る、女房に嫌われる)、女の人ではお腹がはって困るというものです。ガスがでて、みんなに喜んでもらえるのは、唯一お腹の手術後だけのようです。
 便秘になると産生されるガスも増えます。前回の便秘とあわせて、おなら対策も考えてみました。

1) おならの平均回数、量
8月は暑いので、ガーデンはお休みです。草いっぱいの
ワイルドガーデンのなかで、夏のバラが咲いています。

 25~35歳の正常人8人で調べた結果、おならの平均回数は、1日に13±4回でした。
 日本人のおならの量は、1日に400~2,000mlといわれており、かなり個人差があります。
2) おならの成分

 最も多いのが、窒素で60~70%を占めます。その他、水素、酸素、二酸化炭素で、これが4大成分です。その他、メタンガス、アンモニア、硫化水素、インドール、スカトールなど、400種類以上あります。水素やメタンガスのような可燃性成分が多いと、手術中に引火の危険性があります。電気メスが大腸に触れたとたん、大音響とともに腸管破裂をおこしたという報告があります。
 また、メタンガスの温室効果は、二酸化炭素の20倍と言われており、地球温暖化に対する影響も懸念されています。とくに牛は、胃のなかで草を発酵させるため、多量のげっぷとおならをだします。畜産王国ニュージーランドでは、約5000万頭の牛・羊を飼っており、メタンガス産生の少ない飼料を開発中だそうです。
 また、6500万年前の恐竜の絶滅に関する本を読んでいましたら、恐竜のだした多量のおならが絶滅の原因だったという説がありました。


3) おならの起源;のみこんだ空気と腸内で産生されたガス

のみこんだ空気:昔、青山二郎(大正~昭和の著名な骨董収集家)は、空気を胃のなかにいっぱい飲み込んで、いつまでも海の上に浮いていたというエピソードを残しています。
 私たちは、食べ物をのみこむときに、いっしょに空気も飲み込んでいます。これが、胃から腸へいくと、おならとなります。“早食い、大口で食べる、話をしながら食べる、お茶づけやそばなど、すすりこみながら食べる、上を向いてのみこむ” 等の時に空気の嚥下が増えます。また、チューインガムをかむ習慣のある方は、しょっちゅう唾液を飲み込んでおり、その都度空気もはいります。
 さらに、空気を含んだ食べ物(パン、ソフトクリーム、ラムネ、サイダー、ビールなど)も関係します。
 空気をのまないように、食べ方の注意が必要です。また、飲み込んだ空気は、早目にげっぷで出してしまうことです。
腸内で産生されたガス:食べ物のカスが、腐敗または発酵して産生されます。これは、悪玉菌-ガス産生菌の働きで、臭いガスとなります。とくに、インドールやスカトールといった成分には、強烈な臭いがあります。おならの臭いは便の臭いと同じです。腸内細菌叢のバランスにより個人個人きまっており、他人の臭いとは異なります。
 一般に、年齢とともに善玉菌が減り、悪玉菌がふえますので、おならの臭いはきつくなります。また、若い人でも肉食が主体で便秘していると、臭いおならとなります。
 悪玉菌を減らすには、肉・脂肪を控え、食物繊維をとり、善玉菌を増やすといった便秘の時と同じ対策が必要です。
 
4) おならをがまんすると

 ガスの成分は、腸の血管から吸収されて、全身にまわります。そして、肝や腎で代謝されたり、肺から呼気とともに排出されます。そのため成分によっては、口臭の原因となります。
 ガスの多い人は、自家製のガスタンクをお腹のなかにもっているようなものです。これらのガスを吸入した場合、メタンガスでは酸素欠乏の症状がでます。アンモニアガスは、刺激臭があり、気道の粘膜を障害し、呼吸抑制作用を示します。また、硫化水素は、腐敗臭があり、臭覚疲労や呼吸困難をひきおこします。
 腸管ガスの人体への影響は、未だ明らかではありませんが、おならはがまんしないで、早く体から出した方がよさそうです。

5) おなら対策

 原因がわかれば、対策は簡単です。空気を飲み込まないことと、腸内のガス産生を減らすことです。また、おならは、できるだけ早く出してしまうことです。
 友人のアメリカ人(女性)は、人前でのげっぷはエチケットに反するが、おならはそうでもないといっていました。おならをがまんするのは、日本の文化なのかもしれません。
 おならが気楽にだせるような素敵な詩を見つけました。声をだして読んでみて下さい。
楽しくなります。


お な ら う た(谷川俊太郎)

  いもくって ぶ
   くりくって ぼ
    すかして へ
     ごめんよ ば

  おふろで ぽ
   こっそり す
    あわてて ぷ 
     ふたりで ぴょ