2005年(平成17年)8月27日
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Ⅳ 腸の健康-便秘対策 

 昔から「快便」、「快食」、「快眠」は健康の証といわれてきました。便秘するとお腹が不快なだけでなく、頭痛、肩こり、腰痛、不眠、嘔気、食欲低下、痔、肌荒れ、にきびなどの原因にもなります。お年寄りで、元気がないあるいは機嫌がわるいのが、便秘が原因だったこともあります。さらに肝硬変の人では、便秘すると昏睡に陥る危険があります。
 また便秘は、大腸憩室、大腸ポリープ、大腸がんの原因となります。女性では、乳がんも増えると言われています。
 私たちの生命は、みんな一個の受精卵の細胞分裂から始まります。そのなかで最も早くつくられる内臓は腸で、受精第3週には形成が始まります(原腸と呼ばれます)。この原腸の一部の細胞が塊となって、肝臓、膵臓、肺、甲状腺などがつくられます。腸の異常は全身に影響するはずです。

1) 便秘とは:「排便が順調に行われない状態」
7月初めには花が一斉に咲きました。手前はペチュニアプリエッタ

 食べ物は、大体1日で消化・吸収されて便になりますが、食べ物の内容や健康状態によっては、3日ほどかかることもあります。
 「3~5日以上排便がなく、不快な症状が出現したもの」が便秘です。また、「便の水分が70%以下となり、便が硬くなった状態」も便秘です。
2) 良い便と悪い便:毎日、自分の便を観察しましょう。これを観便といいます。

良い便:黄褐色、軟らかい、量が多い、臭わない
「毎日、バナナ2~3本」これが理想形です
悪い便:黒褐色、硬い、量が少ない、臭う
 
 便の色は胆汁の色です。従って、胆管結石や胆道がんなどで胆汁がでなくなると、白い便となります。真っ赤な血便はほとんど大腸からの出血です。痔のこともありますが、大腸がんや潰瘍がみつかることもあります。また、黒い便(タール便といいます)は、食道や胃からの出血です。こういう時には、直ちに病院を受診して下さい。       
 また飲んでいる薬によっても影響を受けます。貧血の人がのんでいる造血剤(鉄剤)では、便は黒っぽくなります。メサフィリンのような葉緑素を含んだ胃薬では、緑色調となります。

3) 排便習慣

 
朝、朝食を食べると、胃の中にはいった食物の刺激で、腸が反射的に動きだします。腸の内容物が直腸に達すると、排便反射がおこります。この時にトイレにいけば、スムーズに便がでます。時間が無いなどと言って、排便反射を意識的に抑えてしまうと、便秘の原因となります。
 美人は便秘になりやすいといわれます。美人ほど気楽にトイレへいけないのでしょうかね。
 なお、トイレにはいって最初の3分間で、その日でる便の70%はでてしまうといわれています。残りをだそうとがんばると、痔をわるくします。残りは、出たくなった時に出せばよいのです。
 トイレはがまんしないことと、長居しないことです。

4) 食物繊維

 第2次世界大戦中にアフリカへ進駐したイギリス軍は、現地人が多量の便をするのを見て驚いたそうです。イギリス人は、肉食が主体ですから、黒っぽい便が少量しかでません。アフリカ人には、大腸がんが極端に少ない事実がわかり、食物繊維の大切さが指摘されるようになりました。
 また、ライオンがシマウマを食べる時には、一番にお腹にかぶりついて、腸を食べるそうです。腸の中の黄色になった部分はすてて、まだ緑ぽい部分を食べます。肉食といえども、食物繊維を自然に摂りいれているのです。
 食物繊維を最も多く含む食品は、海藻類です。その次に、きのこ類、まめ類、野菜と続きます。
 紀元前、秦の始皇帝は不老長寿の妙薬「神仙菜」をもとめて、日本へ使者を派遣しました。神仙とは不老長寿の仙人のことです。これが徐福伝説で、佐賀県をはじめ全国に徐福神社があります。結局、徐福は日本にたどりつき、「神仙菜」をみつけて、自分は仙人になったと言い伝えられています。この「神仙菜」とは、ワカメのような海藻類だったといわれています。
 食物繊維には、便秘解消だけでなく、大腸がんの予防、コレステロールの吸着、糖の吸収抑制、肥満防止などの効果もあります。

セルロース:水を吸収し、排便を促す?大腸がんの予防
ペクチン(オート、リンゴ、バナナ)、食物ガム(コンニャク、やまいも)?コレステロールを下げる、糖の吸収を遅らせる

5) 善玉菌と悪玉菌

 腸のなかには、500種類、100兆個の細菌が棲みついています。便の1/3は食物の消化カス、1/3は胃腸の古くなった粘膜細胞で、残りの1/3が腸内細菌です。乳酸菌、ビフィズス菌、などは善玉菌と呼ばれ、大腸菌、ウエルシュ菌、ブドウ球菌、連鎖球菌などは悪玉菌といわれています。少数のクレブシエラ、クロストリヂウムなどの病原菌も棲みついていますが、腸内細菌叢が保たれているかぎりは、病気にはなりません。
 また、赤ちゃんの腸内細菌は、ほとんどが母親に由来します。母親が便秘で悪玉菌が多いと、赤ちゃんは悪い腸内細菌をうけつぐことになります。
 ノーベル賞を受賞したメチニコフは、ブルガリア地方に長寿の人が多いのは、ヨーグルトをよく食べるためと考え、「腸の内容物の停滞と腐敗が、命を縮め、病気、早老、早死を招く」と主張しました。実際には、長寿に必要な条件としては、ヨーグルトだけでなく、野菜や果物もしっかり摂る、自然のなかでのスローな生活、お年寄りが尊敬され、家庭内での役割をもつなども指摘されています。
 現在、カスピ海ヨーグルトがブームですが、これはクレモリス菌という乳酸菌が主役です。この菌は、ねっとりした粘液多糖体も合成し、これは食物繊維としても働いています。
 悪玉菌のなかには、ニトロソ化合物などの発がん物質や発がん促進物質である2次胆汁酸をつくるものがあります。しかし最近、乳酸菌のなかに、がんリスク低減、アレルギー低減、コレステロール低下などの作用があることがわかってきました。これらは、機能性乳酸菌と呼ばれており、現在、各種のものが市販されています。
 また、ビフィズス菌を増やすには、まず幼児型ビフィズス菌(ヤクルトミルミルなど)を3ヶ月のんで、その後大人型ビフィズス菌(森永カルダスなど)をのむと腸内に定着するといわれています。
 オリゴ糖は、人間には吸収されない糖ですが、ビフィズス菌のエサとなります。オリゴ糖を多く含む食品には、タマネギ、大豆、バナナ、ゴボウ、ネギ、ニンニクなどがあります。逆に、肉や脂物は悪玉菌のエサとなりますので、控えめに。

6) ストレス対策

 
腸は自律神経の影響を受けやすい臓器です。旅行中や試験などで緊張状態が続くと便秘になります。こういう時には、ウサギの糞のようなコロコロ便となります。腸が過緊張で、けいれんしているためです。また、ストレスで悪玉菌が増えるという報告もあります。リラックスが必要です。

7) 運動

 寝たきりの人は、たいていお腹がはっていて、便秘です。運動すると、腸の動きもよくなって、便秘も解消します。患者さんのなかには、ウオーキングをはじめて、通じがよくなったといわれる方も大勢おられます。また、腹筋を鍛えると便を押し出す力がつよくなり有効です。一日30分は歩きましょう。
 また、腹部のマッサージ(「の」の字を書くように、右回りにマッサージする)や腹部を温める(入浴)も、腸の動きをよくします。