2005年(平成17年)6月13日
がん・生活習慣病・老化予防のための生活術 −2−

U 食生活のポイント−その1 

  生活習慣のなかで、食習慣が最大の環境因子です。アンケートでは、自分の摂っている食事は悪くないと思っている人が大部分だそうですが、実際にはかなり偏っていたり、問題があったりです。もう一度自分の食事を見直して下さい。

1) おいしくものを食べる
さとう内科イングリッシュガーデン
(5月のガーデンはバラが満開になりました)
さとう内科イングリッシュガーデンはバラが満開

 おいしいものを食べることよりも、おいしくものを食べることのほうが、大切です。身体が健康な時には、おいしくものが食べられます。たとえ、ごちそうでなくても、音楽をかけたり、花をいけたり、おしゃべりしたりなど、おいしく食べる工夫をして下さい。

2) よく噛む

 
現代人の噛む回数が減っています。どうやって調べたかわかりませんが、一食あたりの噛む回数は、卑弥呼3,900回、家康1,465回、現代人620回だそうです。
 縄文人は、上下の前歯が先端で合っていましたが、現代人は下の前歯は上の前歯の後ろに当たります。また、親知らず(第3大臼歯)が生える人は、100人中36人しかいないそうです。これは、噛まなくなったために、下顎が退化したためです。
 よく噛むと、脳への刺激も増え、唾液の分泌も増えます。老化予防のためにも、一口に30回噛むようすすめられています。

3) 1日2食は主食・主菜・副菜のそろった食事を

主食:ごはん、パン、うどん
主菜:肉、魚、卵
副菜:野菜、海藻、きのこ
プラスゆとり:味噌汁、漬物、果物、飲み物
 主食とは、穀物を主材料とする料理で、食事の中心的位置を占めるものです。主たるエネルギー源となります。主菜とは、蛋白質や脂質の主な供給源です。副菜とは、ビタミン、ミネラル、食物繊維などを供給する料理です。食事の多様性をつくりだす役割もあります。プラスゆとりとは、個人の心身のゆとりとなるものです。
 NHKの調査では、高齢者の60%は、主食・主菜・副菜のそろった食事は1日1食以下です。しかも同じ材料をくりかえし食べています。これは低栄養の原因となります。逆に、主菜が2品以上になると、栄養過剰となる危険性があります。
 1日30品目以上を使って、主食、主菜、副菜のそろったバランスのよい食事をとりましょう。

4) 食欲がない時には、おかずを先に食べ、ごはんを残す

 患者さんの言葉: 「年をとってくると、いろんな欲がひとつずつなくなって、最後に残ったのは食欲でした」
 フランクル(ナチの強制収容所より生還)の言葉: 「明日、処刑されるかもしれないのに、みんな“水のようなスープだけでなく、その中にジャガイモが浮かんでいたらなあ”とか“おいしいパンを食べ、本物のコーヒーを飲みたいなあ”などと一日中考えている」
 食欲は生きていくための、基本中の基本です。いずれでてきます。

5) 少食が長生きの秘訣: 「一口残す」

 
中高年の方の適正カロリーは、1,600〜1,800キロカロリー/日 が一般的ですが、いちいちカロリー計算はできませんので、腹6〜8分目が適当と思います。 
 人間は昔から不老長寿の薬を求めてきましたが、現在判っている老化を防ぎ、寿命を延ばす唯一の方法は「少食」です。動物実験で、カロリーを抑えた食事では、40〜60%寿命が延びたというデータがあります。だだし、カロリーは減らしても、身体に必要な栄養は十分に摂る必要があります。
 金沢の兼六公園の茶室に 「一口残す」という掛け軸があるそうです。これは江戸時代に金沢の殿様が、長生きの秘訣を100歳を超えた僧に尋ねた時、その僧がさっと書いたものだそうです。食事の乏しかった江戸時代に、「一口残す」ことは大変なことだったと思います。
 また、107歳まで長生きしたきんさんの食事は、いつもごはん7分目でしたが、必ず最後に一口残したそうです。
 食べ過ぎると、食物の消化、吸収、代謝に多量のエネルギーが必要となりますが、その時に多量の活性酸素が発生します。活性酸素は、前回述べました様に、発がん、動脈硬化、老化を促進しますので、直接寿命にかかわってきます。
 「一口残す」ことを心がけて下さい。ついでながら、中国で食事をご馳走になった時には、「一口残す」ことはエチケットです。これは、“十分もてなしていただいて満足です”という意味です。全部食べてしまうと、まだ足りないのかと思われてしまいますのでご注意を。