2005年(平成17年)4月22日
がん・生活習慣病・老化予防のための生活術 −1−
さとう内科イングリッシュガーデン
(これから春本番。ガーデン便りも掲載します)

 T 生活のポイント

 現在、日本は世界一の長寿国ですが、これから迎える高齢化社会は、いくつもの病気をかかえて生きていく多病息災の時代です。何かひとつ病気があるからといって、他の病気にならない保障はありません。
 40歳を過ぎたら、健康に関心をもつことが将来の病気予防につながります。

 病気にならないため、あるいは病気がさらに悪くならないための生活のポイントについて、順次考えていこうと思います。
1) 人間の寿命

 最高125歳と考えられています。これは脳の発達期間×5年が、すべての動物にあてはまる寿命の限界です。人間の脳は25歳まで発達しますので、25×5=125歳となります。実際、世界の最高齢者はフランスのカルマン夫人で、122歳まで長生きしました。ちなみに彼女は長生きの秘訣を「退屈しないこと」と「よく笑うこと」と言っていました。また日本の最高齢者は泉重千代さんで120歳でした。翁は「酒と女(年上の)」と言っていました。

2) 日本人の死因

 
1位がん、2位心臓病、3位脳卒中、4位肺炎、5位不慮の事故です。
 人間の寿命は、生きていくための大切な臓器(脳、心、肺、肝、腎など)が1個所でも壊れたら終わりとなります。125歳なら本当の老衰でしょうが、現実には何らかの病気や事故で命を落としているのです。

3) がんと生活習慣

 がんの原因は、食事35%、タバコ30%、ウイルス10%といわれています。統計的には、男の1/3、女の1/5は84歳までに何らかのがんにかかっています。
 日本人に多いがんの促進因子をあげてみました。 
がん 促進因子
 胃がん  高塩食品、熱い食物、燻製、干し物
 大腸がん  高脂肪・低繊維食
 食道がん  アルコール、熱い飲み物、タバコ
 乳がん  高脂肪・高カロリー食
 肺がん  タバコ、大気汚染、粉塵
 肝がん  B型・C型肝炎ウイルス、アルコール
 
 がんの予防には、これらの促進因子をできるだけ体に取り込まないように気をつけることが大切です。現在ふえているがんは、肺がん、大腸がん、乳がんなどですが、これらは欧米型の生活習慣になってきたためと言われています。逆にいうと、生活習慣を改善するとがんになる確率を下げることができます。

4) 動脈硬化と生活習慣

 「老化は血管から」と言われているように、高血圧、糖尿病、高脂血症、高尿酸血症などの生活習慣病のある方は、10〜20年早く年をとるといわれています。若いころの動脈は、弾力性があり内面も平滑です。しかし、動脈硬化になると、古びたゴムホースの様に弾力性がなく、内面も凸凹になってきます。従って、血圧があがると容易に破けて出血したり(脳出血、眼底出血など)、血管の内に血栓ができてつまったりします(脳梗塞、心筋梗塞、下肢壊疽など)。一度、動脈硬化がすすんでしまうと、元にもどすことはできません。少しでも動脈硬化の進行を遅らせることが大切です。
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 最近、「メタボリック シンドローム」という概念が提唱されています。これは、過食と運動不足による内臓脂肪症候群といえる病態で、2005年4月にできたばかりの日本の診断基準では、腹部肥満(ウエスト周囲径 男85cm以上、女90cm以上:立位、軽呼気時、臍レベルで測定)のほかに、
 中性脂肪150mg以上またはHDL−コレステロール40mg未満 
 最大血圧130以上または最小血圧85以上 
 空腹時血糖110mg以上
 上記3項目のうち、2項目以上に当てはまると診断されます。
 ここで注目されるのは、個々の異常はいずれも軽度だということです。しかし、たとえ軽度であっても、合併すると危険な組み合わせです。現在、日本では、40歳以上の男性の25%が相当し、その心血管疾患発症率は2.2倍、死亡率は3.5倍に高まるといわれています。
 これからは、ダイエットして体重を減らすことよりは、ウエスト周囲径を減らして内臓の脂肪をとることの方が心筋梗塞などの病気を予防する近道となりそうです。

5) 老 化

 
いつまでも気は若いと思っていても、身体の老化はいつのまにか進んでいるものです。眉毛や鼻毛がのびる・耳に毛がはえる・爪にタテ線がはいる・味噌汁の湯気で鼻水がでるなども老化現象だということをご存知ですか?
 目、歯、皮膚の老化は気がつきやすいものですが、腎や肺の機能は70歳の頃には若いころの50%程度へ低下しています。ただ、各臓器の予備能はかなり大きいので、機能低下の症状は普通の生活では目につかないだけです。
 ところで、平均寿命は日本より短いアメリカですが、2004年のアメリカの100歳以上の人口は約14万人で、日本の2万3千人より多い割合です(総人口は日本の2倍)。
 ハーバード大学の調査では、アメリカの100歳以上の方には「プラス思考」が多かったそうです。このことより、「プラス思考」で「生活習慣を改善」すれば、病気や老化もある程度防げるのかもしれません。
 現在、老化を100%防ぐ方法はありませんが、遅らせる方法は少しわかってきました。ポイントは食事療法です(次回述べます)。ただ、不老長寿は万人の願いであっても、お釈迦様の教えでは「生老病死」は「思うがままにならないこと」です。
 病気や老化を防ぐ努力は必要ですが、もともと勝てない相手との戦いです。老化を素直に認める心のゆとりも必要かと思います。

6) 活性酸素の害

 最近、活性酸素が発がん(DNA遺伝子の損傷)、動脈硬化(悪玉コレステロールの酸化)、老化(ミトコンドリアの障害)、糖尿病、アトピー性皮膚炎、白内障、シミ、ソバカスなどの原因として注目されてきました。
 鉄がさびたり、切ったリンゴが黄色くなったりするのは、酸素の働きによるものですが、活性酸素とはその酸化力のはるかにつよいものです。
 例えば、実験的にネズミを酸素100%の環境で飼うと、わずか7日しか生きられません。酸素は多すぎると有害なのです。
 活性酸素の発生は、
 細胞呼吸
 タバコ、排気ガス
 食品添加物
 放射線、紫外線、電磁波
 ストレス
 過激な運動
 などによって増加します。できるだけ、これらを避けることが必要です。とくに、40歳をすぎると、体の抗酸化力が低下してきますので、要注意です。

 次回より、食事、水、嗜好品、睡眠、入浴、運動など生活習慣上の具体的な注意点につきお話しようと思います。